連立与党、公的年金制度改革について合意

カテゴリー:高齢者雇用

ドイツの記事一覧

  • 国別労働トピック:2006年11月

連立与党の作業グループは10月23日、公的年金制度の改革案について合意に達した。これにより昨年11月の連立協定に規定されたとおり、年金支給開始年齢が現行の65歳から67歳に段階的に引き上げられる見通しとなった。

公的年金制度改革

連立与党の作業グループは10月23日、標準的な年金支給開始年齢を、2012年から2029年にかけて、65歳から67歳まで引き上げることを盛り込んだ年金制度改革案に合意した。引き上げのペースは、65歳から66歳までが年間1カ月、66歳から67歳までが年間2カ月である。

年金保険料率は、2020年までは賃金の20%未満、2030年までは同22%未満に抑えられる。年金支給水準は、2020年までは現役世代の総賃金の46%以上、2030年までは同43%以上を維持するとしている。

これらの改革により通常63歳から67歳までの間に引退することが可能となる。67歳以前に年金を受給する場合は、受給額が一定程度削減される。少なくとも45年間保険料を支払った被保険者は引き続き、減額なしに65歳から老齢年金を受給できる。

ミュンテフェリング労働社会相は、「人口動態が大きく変化している今日、年金問題はとりわけ政治家にとって重要な挑戦を提起している。しかし、労使もまた、責任を分かち合っている。社会的に重要な年金は現実的で、世代間の公正さに留意したものでなければならない。私は今回の合意の成果を称賛する」と述べた。

年金支給開始年齢の67歳への引き上げや関連する修正を含む法律は、現在条文の作成段階にあり、今年連邦議会で審議される予定となっている。

現行の公的年金制度

ドイツの公的年金は職域によって分立しており、ドイツ年金保険、鉱山・鉄道・海上年金保険および農業者老齢扶助などの諸制度がある。年金制度体系は報酬比例の社会保険方式を採用している。現在のドイツ年金保険の保険料率は19.5%(労使折半)であり、2007年から19.9%に引き上げられる。年金支給水準は、全被保険者の可処分所得の伸び率に応じて改定される(賃金スライド)。しかし、2001年の改革により、賃金スライドの抑制が講じられ、2004年改革では賃金スライド算定方式に持続可能性要素が導入された。

追加的老齢年金の普及促進

政府は、年金保険による公的年金制度が将来に渡って老齢保障の中核になるとしているが、第2、第3の柱として、企業年金や個人年金の重要性も強調している。2001年の年金制度改革においては、公的年金の給付削減を自助努力で補う目的で、「リースター年金(注1)」を導入した。追加的老齢年金の普及を促進するため、政府は、企業年金に対する社会保険料控除、税控除や個人年金に対する助成金、税控除などの施策を講じている。これらには、児童助成金によるファミリー・フレンドリー施策や持家促進のための優遇措置などが含まれる。

こうした奨励策により、リースター年金の加入者が急増している。2006年第2四半期には56万8000人増加し、助成の対象となる加入者数の合計は約643万4000人となった。

参考

  • ドイツ連邦労働社会省ホームページ
  • 厚生労働省『世界の厚生労働2006』TKC出版
  • 清家篤・府川哲夫編著『先進5か国の年金改革と日本』丸善プラネット株式会社
  • 藤本健太郎「ドイツの新連立政権の年金政策―少子高齢化をいかに乗り切るか―」『海外社会保障研究』Summer 2006

関連情報