男女雇用均等に関するアクションプラン(行動計画)を発表

カテゴリー:非正規雇用労働法・働くルール労使関係

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  • 国別労働トピック:2006年11月

2006年9月、英国政府は男女雇用均等に関するアクションプラン(行動計画)を発表した。アクションプランは2006年2月に女性労働委員会(WWC)が出した勧告「より公正な未来の形成(Shaping a Fairer Future)」に基づき策定されたもので女性に対する処遇、労働条件における格差の是正をめざす内容となっている(図表1)。

英国では従来、雇用の分野における男女の均等な取り扱いに関する法規制や労働者保護は少なかった。1960年代以降、EC法の男女平等に関する法原則(注1)の国内法化の必要性から、1970年同一賃金法、1975年性差別禁止法などの平等立法が制定されたものの、労働条件は労使交渉によるとの考え方が強いことや、伝統的に女性が家事責任を果たすべきという認識が強かったこと、男性の長時間労働が文化として根付いていたなどの理由から男女雇用均等への取り組みは進展しなかった。

1970年以降、サービス業の拡大など産業構造の変化に伴い柔軟な雇用に対する使用者ニーズの高まりを主な理由に家庭責任を有する女性もパートタイム労働に代表される非典型の雇用を通じての労働力化が進んだ。この結果、年齢層別にみた一部の女性労働力率の落ち込み(いわゆるM字カーブ)が解消した(図表2)。(注2)さらに全雇用者に占めるパートタイム労働者の割合が1971年には15%にすぎなかったのが1996年にはその約2倍に当たる29%に達するなど労働市場で大きな位置を占めるようになった。しかしパートタイム労働者に対する処遇については特段の規定がなかったため、パートタイム労働者の大半を女性が占めるという理由から、差別的取扱いに対する判断は性差別禁止法に規定する間接差別に照らして行われていた。その後、EUパートタイム労働指令の国内法化の必要から2000年に「パートタイム労働者規則」が成立し、雇用関係全般についてパートタイム労働者の不利益取り扱いが禁止されるに至った。

アクションプランの概要

最近では男女の実質的な平等は職業生活と家庭生活の両立があって初めて実現可能であると認識されるようになっている。具体的には2003年4月に2002年雇用法(Employment Act 2002)、2006年6月には就業家族法(Work and Families Act 2006)が施行されるなど、ワーク・ライフ・バランス政策に基づく立法が行われ、男女の雇用均等が一層進展することが期待されている。(注3)

女性労働力の量的な増加を経た現在、英国の男女雇用均等政策の主眼は女性労働力の質の向上へとシフトしている。アクションプランで特に強調されているのが、パートタイム労働者とフルタイム労働者間の処遇格差の改善だ。パートタイム労働者とフルタイム労働者間の賃金格差は縮小傾向にあるものの、近年ではその度合いが頭打ちになっている。これをふまえ、アクションプランではより質の高いパートタイム労働を創出することを目的に地方政府、英国労働組合会議(TUC)、英国産業連盟(CBI)などと協働しながら政策を進める予定。このための施策には50万ポンドの予算が計上され、質の高いパートタイム労働をするための使用者支援なども行われる予定。このほかアクションプランでは従来男性の領域であった水道工や建築作業といった職種にも女性が進出することができるよう支援するなどの内容がふくまれている。

図表2

出典:経済産業省

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