公務員を中心とした賃金制度の本格的な見直し

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2006年11月

2006年1月から公務員法(注1)が改正となり、公務員の位置づけと機能について統一的基準が示されている。同法施行は、公務員が縁故による癒着や汚職を行うことを防止することが最大のねらいといえる。

同法の施行により、既得権として行使されてきた伝統的な公務員体制の弊害は一部取り除かれたといえる。

そういった中、7月に入り、収入分配制度改革が始まっている。今回の改革は、公務員の賃金制度の改革が中心で、その収入分配秩序を規範化することが目的である。新たな制度では、「職務と等級を合致させた全国統一的な公務員賃金制度の構築」が方針として掲げられている。こういった方針が掲げられる理由としては、現行の賃金制度の問題点としては、不十分な奨励機能、不合理な構造、低すぎる下級公務員の賃金水準、平等主義によるモラール低下などが指摘されている。

公務員の賃金制度改革の重点は、新しい分配の仕組み作りと仕組み作りを推進するための基盤整備にある。具体的には、(1)各職務間や各等級間の賃金格差を適切に設けることで労働に応じた分配を可能にする、(2)職務にみあった等級付けを行い待遇を等級と適切に結びつける、(3)等級による奨励機能を強化する、(4)下級公務員に配慮し、公務員組織の安定が促進されるようにする、(5)健全な昇進・昇給の仕組みを確立し公務員給与が社会経済の発展水準と連動させつつ、人材間の競争も促す、(6)収入分配秩序を規範化することで汚職を防止し、公正な行政を構築する――などの点を考慮した基盤づくりが特徴であるといえる。

ちなみに、中国人事部は、2007年の中央国家機関と直属の89機関の公務員募集を10月24日で締め切ったが、6000名以上が応募している。この現象は、昨今の大学生の就職難の影響を反映している。また、公務員試験が特別な職務を除いて、戸籍や性別、身分などに関係なく誰でも受験できるようになったこと、応募告示の方法がインタネットなどを通じて広範囲に行われるようになったことなど、公務員を取り巻く環境が開かれつつあることも反映している。

ところで、今回の賃金制度改革では、公務員制度改革以外にも、(1)企業の離・退職者に対する基本養老年金基準の引き上げ、(2)企業従業員の基本養老年金制度の整備、(3)傷痍軍人、「三紅(在郷退役紅軍など)」や「三属(革命烈士の家族、殉職軍人の家族など)」への補償、補助基準の引き上げ、(4)最低生活保障対象の都市住民への補助水準の向上――などが行われており、約1億2000万人が対象として含まれている。

各種メディアの報道によると、今回の賃金制度改革は、国家公務員、各事業部門の従業員など国家財政を財源とする様々な機関の従業員の利益調整や昇給を図る運動になりつつあるといわれる。

しかし、その一方で、農民層や個人資本による企業の従業員、個人事業主などは対象とはなっていないことから、不明朗な収入、非合法な収入問題の根本的な解決にはなっていないとの厳しい指摘もある。

参考

  • 海外委託調査員(経営側)レポート
  • 経済日報10月12日、25日付
  • 人事院資料等

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