政権交代と今後の労働政策

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2006年10月

2006年9月17日、総選挙が行われ中道右派のスウェーデン連合(注1)が勝利した。12年にわたって与党にあった社会民主党が政権から離れることになった。ちなみに社会民主党は過去74年間のうち1976年から1982年、及び1991年から1994年を除く65年もの間政権政党であった。

政権交代が実現するものの、既存の政策路線に劇的な変化はないものとされている。というのは、スウェーデン連合はこれまでの社会福祉制度を変更しないこと、ならびに、追加的な社会改革によって既存の制度を補完することを公約として掲げた。保守党は、かつて英国ブレア首相が行ったキャンペーンにあやかって、「ニュー保守党=ニュー・ワーカーズ政党」と銘打って選挙戦を戦った。このことが、有権者に対して、「新しい労働党」に安心して投票できるという印象を与え、選挙に勝利したという見方が有力である。

それとともに、社会民主党を支持していた有権者の一部は、従来の社会民主党政権に辟易しており、真の社会民主主義は社会民主党よりも保守党によってより良いものになるという印象をもっていたという見方もある。選挙は実質的には、社会民主主義の勝利であるという論調さえ見られる(地元紙Dagens Nyheter、9月20日付け)。

更に、保守党はブルカラーの有権者の信頼を得るために労働法や団体交渉に関する法制度を事実上変更しないものと考えられている。よって、新政権が行える政策は主として、雇用に関する税制や社会保障制度に関するものになる。パートタイム労働者にフルタイム労働者と同等の権利を求める提案は取り下げられるだろう。また、積極的な労働市場政策を行ってきた労働市場庁も再編されると見られる。

スウェーデン連合は昨春、影の予算を作成し、減税をうちだした。低及び中所得者に係る税、法人税を引き下げる内容である。この引き下げ分の補填は、200日を超えた長期失業者に対する手当など各種手当の削減によってまかなおうとしている。ただし、失業手当の削減は手当受給者が新たに職に就きやすくするための改定であるとしている。

経営者側はスウェーデン連合が打ち出している新しい政策を、限定されたアプローチであるとして好ましく思っていない。労働法制は多くの点で改定が必要であるとしている。労働法改定の必要性を明言しているのは、スウェーデン連合4党のうち中央党だけである。同党は零細企業の経営をよりよくするために労働法を改定すべきであると主張している。モード・オーロフソン党首(Ms. Maud Olofsson)は雇用大臣に就任することが有力視されている。

参考

  • 委託調査員レポート

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