スペイン経済の成長を支える移民労働力

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2006年10月

不法移民の流入が続くスペイン。こうしたなか、政府が不法移民問題への取り組みを声高に主張する一方で、「移民の労働力こそがスペイン経済の成長を支えている」という内容の報告書が発表された。本報告書は、バルセロナに拠点を置く金融機関Caixa Catalunyaが2006年8月28日に発表したもの。

報告書では、スペインの過去10年間の経済成長は「平均で3.2%は移民によるもの」であり、1人当たりの実質GDP成長率についても、移民の流入がなければ大幅にダウンするとして、「移民の提供する豊富で安価な労働力は、スペイン経済の活性化にとって最も重要な要因である」という見解を示している。なお、経済成長に対するこうした移民の貢献度の高さは、スペインに限らず拡大前のEU15カ国についても同様であるとしている(注1)。

スペインの人口についてみてみると、過去10年間の人口増加率は10.7%。ユーロ圏では、アイルランドに次いで第2位である。この80%近く(78.6%)を外国人が占める。スペインにおける外国人人口の増加率は年8.4%と、ユーロ圏の3.5%及び(拡大前)EU15カ国の3.7%を大きく上回っている。

もちろん、これらの数字をみる場合には、2005年の不法移民合法化プロセスの存在を考慮する必要がある。しかし、それでも移民が急増した過去5年間を通じて、人口の自然増は年間8万人前後で一定しているのに対し、移民は合法・不法を合わせて年平均60万人の勢いで増加を続けている。

少子高齢化の急速は進展に伴い、公的年金の財源不足や家事・育児、老親の介護を担う労働力不足が深刻化しているスペイン。こうした状況にあって、確かに外国人労働者に対する期待は高まりをみせている。一方、国立統計庁のデータによれば、今後も年間3.6%前後の成長率を維持していくためには、年間40万人の移民労働者の流入の継続が不可欠とされる。「不法移民ゼロ」という政府の主張とともに、スペインの移民政策の行方が注目される。

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