企業の生産投資が減少

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2006年10月

民間の経済研究所エコノマティカ(ECONOMATICA)が、国内の民間大手企業231社の投資状況をこのほど調査した結果、労働党が政権を取った2003~2005年の3年間の生産拡大純投資は、前政権の2000~2002の3年間に比べて48.9%低下していることが明らかになった。GDPの低成長、雇用拡大不履行の一因を証明した形となっている。

この3年間で生産純投資は835億レアル(約4兆4662億円)から427億レアル(約2兆2839億円)へと減少した。また補修やメンテナンスを含む総投資は21%の減少となっており、企業はGDPの低成長を予想して、現状維持に重点をおき、生産拡大投資に意欲を示さなかったことが明らかだ。GDPの動向とは関係なく成長を続けている通信と、民営化後の投資がまだ続いている電力会社、および世界的に注目を浴びているバイオエネルギー部門の、大規模投資拡大がなかったならば、状況はもっと悪くなっていたということもできよう。

他方、企業が生産拡大投資を押えているもう1つの理由として、ドル安市場が指摘されている。前政権までは為替相場が適正に維持されていたために、企業は輸出目標の投資を行ってきた。しかし労働党政権に入ってから、政府が政府負債運用を容易にする手段として、高金利政策を強化し、国債の購入に高い金利を設けているために、金利稼ぎ目的の外国の金融投資が増加した。このためドル流入が拡大、さらに内需後退の対策として、企業は輸出に活路を求め、貿易黒字が増加し、国内にドルが余り、異常なドル安市場を出現させている。

輸出競争力を失った企業は、外国に生産拠点を移したり、部品、原材料を輸入に切替えたりして国内生産を縮小しており、特に部品、下請け部門で事業の縮小、人員整理が多く見られる。企業側は為替政策の是正、税制改革、高金利政策の見直しを要求しているが、選挙対策として9月から標準金利を下げた現在でも、名目年間標準金利は14.25%と相変わらず高金利を維持しているままだ。この状態を放置すれば影響はますます拡大するとして、政府の早急な対応策が望まれている。

参考

  • ECONOMATICA
  • 海外委託調査員

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