グローバル化が良質の雇用創出に結びつかないとする報告書を発表

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2006年1月

ILOは12月9日に公表した報告書「主要労働市場指標(KILM)」(注1)の中で、世界的な経済成長は、貧困の削減をもたらすような良質な新規雇用創出には結びつかないと結論付けた。KILMによると、1995年~99年には、国内総生産(GDP)が1ポイント上昇すれば世界の雇用は合計0.38ポイント伸びていたのに対し、1999年~2003年には、国内総生産(GDP)が1ポイント上昇しても雇用は逆に0.3ポイント低下したとされ、経済成長と雇用の伸びとの相関性が薄まった。また同報告書の中でILOは、雇用の創出、生産性向上や賃金の改善、貧困の削減に関して世界的に格差が拡大しつつあることを指摘している。

KILMは、労働市場に関わる20の主要指標を用いて、世界の雇用の量と質に関する実態を詳細に報告している。量的指標には、労働力率、就業人口、非労働力率、雇用弾性値、産業別雇用、労働生産性、失業率などがあり、質的指標には、労働時間、賃金、雇用形態、失業期間などを用いている。

この調査によると、経済の発展によって東アジア地域では雇用が堅調に伸び、生産性や生活水準の向上が実現したが、アフリカや中南米などでは、農業部門において劣悪な労働環境で働く労働者が増えている。また、新規に創出された雇用がもたらす収入を見ても、かろうじて貧困線を越える程度か、相当な低水準に過ぎないということも明らかになった。実際、世帯収入が依然として1日2米ドルの貧困線以下の労働者は、世界の労働者の約半数を占め、貧困線未満で生活する労働者の総数は、過去10年間減少がなく、13億8000万人であると同報告書は指摘している。一方、世界の雇用に占める貧困線以下の労働者比率は縮小し、1994年の57%から、今回の調査では50%を少し下回るまでになった。

ILOソマビア事務局長は談話の中で、「重要なメッセージは、これまで世界の労働者の雇用と収入の改善は政策決定の優先事項ではなかったことだ」と指摘した。同事務局長は続いて、グローバル化が十分かつ持続可能な「ディーセントワーク」に結び付かないことが明らかになったとして、「ディーセントワーク」をあらゆる経済社会政策の中心目標に据える必要性を強調するとともに、本報告書がその目標達成のための重要なツールとなり得るという考えを示した。加えて本報告書は、発展途上国の経済において問題なのは、完全失業よりむしろ、生産的な「ディーセントワーク」の不足であると強調している。男女を問わず、労働者が非常に少ない賃金で長時間働いているのは、働かなければ収入がゼロになる道しか残されてないからであるとされる。

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