年金の移動に関する指令案
欧州連合(EU)欧州委員会は10月20日、企業年金の移動性に関する指令案を発表した。現在いつくかのEU加盟国においては、仕事や働く国の変更が、企業年金の権利の喪失に繋がってしまう場合がある。指令案は、EU加盟国や産業を横断して移動する労働者の損失回避、利益擁護を目的としている。EUでは仕事を変える労働者の数が増加している。EU旧加盟15カ国においては、3人に1人の労働者が5年に1回仕事を変えており、毎年9%の雇用者が転職しているという。
労働者が仕事や働く国を変えることを容易にすることは、リスボン戦略(成長と雇用のための10カ年計画)が掲げる目標の達成に貢献する。労働者の柔軟性が増すにつれ、EU域内労働市場の適切な場所で適切な技能の仕事を見つける機会も増加する。指令案は、EUにおいて補助的年金への注目が増し、多くの加盟国において高齢化の影響に備えた改革が進められているこの時期に発表された。
欧州委員会の提案は、企業年金のみを対象としている。公的年金に関するEU法制は30年前に導入された。税金や年金の指数化(物価スライド)などの問題は扱っていない。指令案は、現行の補助的年金制度の規定による加盟国内および加盟国間の移動の障害を減少させるため、次の3つの分野での取り組みを提案している。また、移動が補助的年金の権利にどのように影響するかに関する労働者への情報提供を改善するよう加盟国に求めている。
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年金にかかわる権利の取得条件に関して、指令案は、労働者が年金に加入できる年齢制限を21歳未満とするよう提案している。また、新たな労働者が年金制度に加入するために必要な勤続期間(待機期間)は1年を超えてはならず、年金制度に加入する労働者が権利を取得するために必要な期間も2年を超えてはならないとしている。
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休眠中の権利の保護に関して、指令案は、労働者が前の使用者に関係する制度を離脱する場合、加盟国は移動する労働者が不利になるような形でこれらの権利が調整されないよう保証すべきであるとしている。
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1つの年金制度から別の年金制度へ移行する可能性に関して、指令案は、労働者の既得権が非常に少ない場合を除いて、前の年金制度に留まるか、新しい制度に移行するかを選択する権利を労働者に与えるべきであるとしている。
出所
2006年1月 EUの記事一覧
- 欧州委員会、障害者対策に関する報告書を発表
- 欧州企業の83%が職場における多様性が企業利益に貢献すると回答
- 年金の移動に関する指令案
関連情報
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