欧州委員会、障害者対策に関する報告書を発表

カテゴリー:雇用・失業問題

EUの記事一覧

  • 国別労働トピック:2006年1月

欧州委員会は12月1日、欧州連合(EU)の障害者の生活を改善するための施策(2006~2007年)を盛り込んだ報告書を発表した。報告書は、中小企業の障害者に関する認識の向上、障害者の雇用・訓練・機会均等のための欧州社会基金の活用、障害者の自立した生活の概念の開発などを通じて、障害者の「積極的な包含」の促進を提言している。

EUの16~64歳人口ののうち4460万人(15.7%)が長期の健康問題または障害を抱えている。人口の高齢化に伴い、障害の発生も増加し、障害を抱える人々の63%が45歳以上となっている。しかし、障害者の多くが働く能力を持っており、ケア・サービスの提供により顕著な労働力となる可能性を秘めている。働く能力を持つ約350万人の障害者が就職を希望しているという。

EUの障害者の非労働力率は全人口のそれよりも高い。日常生活にさほど支障のない比較的軽度の障害者の非労働力率が50%である一方、障害のない人々の非労働力率は26.9%となっている。2003年にはEU15カ国の障害者のわずか40%しか職に就いていなかった(障害のない人々の就業率は64.2%)。

障害者がもっと仕事に就けるよう支援することは、EUの労働力を増加させるとともに、税収の増加や福祉手当の減少によって公的財政に寄与する。労働力の高齢化が顕著に始まる2010年のEUの就業率目標(高齢者50%)の達成にも貢献する。

報告書は、2006~2007年の間の優先行動として、障害者の就業率の向上、良質の支援やケア・サービスへのアクセスの提供、障害者の商品・サービスへのアクセス可能性の改善、EUの情報収集および分析能力の向上――などの4つの活動を提案している。また、障害者が「積極的な包含」を享受する最良の方法は、自立した生活を通じて達成されると主張。そのためのEUの施策は、障害を持つ人々に、社会・職業への統合や共同体の生活に参加する権利を保証することであるとしている。

欧州委員会は、EC条約の基本的権利に基づき、障害者に関する市民の概念を普及させることを目指している。報告書の提案は、障害者がその役割や市民としての責任を果たすための構造的環境の整備に貢献すると主張する。

この報告書は、拡大EUにおける障害者の状況を取りまとめた初めてのレポートである。欧州委員会は、この報告書を2年に1度、欧州障害者の日に発行することとしている。

出所

2006年1月 EUの記事一覧

関連情報