社会保障基金と30バーツ医療基金の統合問題

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  • 国別労働トピック:2005年9月

すでに国民生活に浸透している30バーツ医療制度の医療基金を、社会保障基金と統合する方向にあることが明らかとなり、各方面で議論を呼んでいる。

基金の統合を発表

政府報道官は7月7日、30バーツ医療制度、民間社会保障基金(SSF)、公務員・国営企業社会保障基金、および強制加入の自動車保険基金の4つを統合するとした計画を発表した。30バーツ医療制度とSSFの統合は、タクシン首相が代表を勤める国民健康保険制度に関する会合においても、すでに大筋で合意に達しているという。

基金の統合は2005年10月1日を目処に実施したいとのことであるが、場合によっては2006年1月1日からに延期される可能性もあるという。

30バーツ医療制度を運営する国民健康保険事務所(NHIO)は、基金の統合により、よりよいサービスが提供できるとしているが、ジャルポン労働事務次官らは、今回の統合により、民間の保険を利用している人々がサービスの拡大の恩恵を受けるが、それ以外は大きな変化はないだろうとしている。

労組は批判

一方、タイ労働全国協議会(NCTL)のパナス議長は、労働者の多くが統合によるサービスの低下を懸念しているため反対しているとし、すでに赤字状況に陥っている30バーツ医療制度を、現行の社会保険基金が補填する形になることは目に見えていると述べている。

タイ労働調停委員会(Thai Labor Reconciliation Committee:TLRC)のウィライワン女史は、貧しい人たちの貴重なお金が、タクシン首相の人気取り政策に使われていると批判している。更に7月10日には、TLRCがタクシン首相に30バーツ医療制度の統合計画を廃止するように求めた。特に、SSFの加盟者800万人は、この統合案に対して強い不満を感じており、仮に統合が決定した場合、大きな反対運動が起きる可能性があることも示唆した。

タイ労働会議(LCT)のプラチュアン議長も、基金の統合問題に強い反対の意思を見せている。

首相は2つの基金の統合は行わないとコメント

その一方でタクシン首相は、7月8日の発言で、基金の統合はまだ計画しておらず、全ての基金の非効率さを改善するための対処方法を検討しているにすぎない、としている。そして、一般的に30バーツ医療基金の財政状況が非常に厳しいと言われているが、実際は問題なく運営されていることも明言した。

社会保障費は引き下げる方針へ

原油価格の高騰による生活費の上昇、および、2005年7月に最低賃金が引き上げられたことを受け、下院の労働委員会が7月11日に、社会保障費を引き下げることを決定した。現在、従業員と経営者は各5%の社会保障費を負担しているが、具体的な引き下げ額はまだ明らかにされていない。

参考

  • Bangkok Post、2005年7月8,9,10,12,17日

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