台湾における移民に関する戦略

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2005年9月

1990年代から台湾には合法的移民、移民労働者、不法滞在者の3種類の移民がいる。この3つのグループと台湾の土着民との間には、言語、文化的背景、慣習、生活様式の点で大きな違いがある。そのため、社会生活に適応する過程で、これらの移民は必然的に固有の状況と問題に直面している。

最近、台湾社会では、この問題を解決するための優れた政策や戦略をどうするかということが大きな問題となっている。

内務省(MOI)が発表した統計によると、台湾、金門、連江縣の2002年末の移民人口は総数約141万人であり、現政府によって効果的なコントロールが行われている同じ地域の総人口の6.45%を占めている。その内、男性は62万3899人、女性は79万1485人で、女性が78.83%を占めていた。

一方、内務省の別の統計では、最近の移民の内24万0837人が台湾市民の外国人配偶者であり、この内男性が6.9%、女性が93.1%であることが示されている。この外国人花嫁の内54.8%は中国出身者で、39.7%が東南アジア、残りが他の国々の出身である。

近年、台湾の外国人移民、特に外国人や中国出身の配偶者が、台湾で生活の問題に直面していることが調査や講評で明らかにされている。この問題には、社会への不適応、物質的不安定、対人関係の欠如、不十分な社会支援ネットワーク、家庭内暴力、育児問題、在留期間中の生計の困難などが含まれる。

移民の社会的適応を促進するための政府の重要な役割は、彼らが地域の生活に参加し、生活のさまざまな側面への同化を達成できるように支援することである。また、移民が経済発展の促進など移民先国の社会に貢献できるようになることも期待されている。

台湾は移民を積極的に奨励している国ではない。国民が本当に望んでいる重要な目標は、移民が、社会や国に対して大きなトラブルや問題を引起すことなく平和に暮らせるようにすることのようである。

政府による移民への支援政策には次のものがある。この政策には、すでに実施されたものもあれば、まだ完了していないが、学者や関連団体から強く推奨されているものもある。

  1. 移民のための言語教育コースの整備
  2. 地元の慣習や慣例に関するセミナーの開催
  3. 移民への基本的援助の提供
  4. 治安と地元市民の安全を守るための移民の不法な行動の防止
  5. 市民に対する移民への親切な待遇の働きかけ

労工委員会(CLA)職業訓練局(EVTA)が最近発表した月例統計報告によると、台湾の今年4月現在の外国人労働者の内、いわゆるブルーカラーは30万2649人、ホワイトカラーは2万1000人であった。この外国労働者、特にブルーカラー労働者は台湾で一時的に労働し、滞在している者たちであるが、さまざまな種類と程度の社会への適応問題に直面している。大きな問題は、ブルーカラーの外国人労働者の内、介護の従事者が約12万5000人、家事サポートの仕事をしている者が約2300人で、現在外国人ブルーカラー労働者全体の42.1%を占めていることである。

ここで問題になるのは、家事サービス労働者は、外国人労働者であろうと国内労働者であろうと、労働基準法など労働者保護法から長い間排除されてきたことである。このような状況から、外国人介護者は台湾人介護者以上に不公平な待遇と乱用に苦しんできた。これについて労働団体は介護者を精神異常に追い込んだのは、2年以上一日の休みもない絶え間のない労働であったという意見を述べている。しかし、このような外国人労働者は労働基準法の適用外であり、移民家事サービス労働者とその雇用者との契約は現在随意契約であるため、国家当局が介入して紛争を解決する余地はない。

現在労働団体は、政府は、移民家事サービス労働者とその雇用者の指針となる特別な労働基準法と見なされる、正式な家事サービス法を起草し、立法院第三読解で審議すべきだと要求している。労働団体は、この家事サービス法の起草により、家事サービス労働者に大して週1日と国民の祝日の休日が与え、1日8時間を超える労働を要求しないようにすべきだと考えている。また、雇用者は移民家事サービス労働者に、適当な個人用宿泊施設を与えるべきであり、労働者は住込みか否かを選択する自由を持つべきでると提案している。

外国人家事サービス労働者の数の増加とこれに伴う問題が増えていること、労働基準法を家事サービス事業に適用するのは困難であることなどと考慮し、CLAでは、就業サービス法に基づき、国内の長期的な介護人材の不足を補うという原則に位置づけられてきた外国人介護労働者に関する開放政策を見直した。国内介護システムの発展に応じて、外国人介護労働者は徐々に減少してゆくと推定されている。家事サービス法の制定により、CLAは、討論と検討を重ねた結果、外国人家事労働者とその雇用者のための契約モデルを提供することに成功している。

政府とって不法入国者問題を解決する効果的戦略を設けることも重要である。密航する外国人や職場から逃げて不法滞在する外国人労働者は後を絶たない。このような人々は非常に多く、現在も増加し続けている。こういった不法滞在者たちは台湾で不安定な生活を強いられていることは想像に難くない。不法滞在者を入国させないことが最も効果的方法であるが、同時に不法滞在してしまっている者を効果的に発見し、本国に送還することは当然のことであるが、不法滞在者に対して人間らしく扱うこともまた不可欠であるというのが政府のスタンスである。

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