障害者の労働条件と能力開発

カテゴリー:雇用・失業問題人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2005年9月

台湾では、就業サービス法第24条により、「監督官庁は、身体・精神障害者本人が就業を望む場合、その雇用を促進し必要に応じて関連手当や補助金を支給しなければならない」と定められている。行政院労工委員会(CLA)は、そういった障害労働者の労働条件、雇用形態、職業訓練など就労サービスの必要性に関する状況を統制し、障害者のための雇用機会の拡大と雇用促進のための政策立案の参考に資する目的で、「障害者の労働条件に関する調査」を実施し、その結果を最近発表した。この調査は、政府発行の障害手帳を持つ15歳以上の台湾国民を対象に2004年8月に実施され、1万2123人の有効回答を得ることができたがサンプル誤差は、0.89%と極めて精度の高い調査となった。

調査結果では、15歳以上の障害を持つ国民総数82万9059人の内、15万2238人、すなわち18.4%が有職、2万6339人すなわち3.3%が失業中であった。今回の調査結果では、台湾の障害を持つ労働者の1)就業、2)失業、3)能力開発に関する意識と現状が明らかとなった。

1.就業の現状

障害労働者が参加する上位5位までの産業は製造業で、24.8%を占めている。それ以外では、安全、環境衛生、宗教、自動車修理・保守、洗濯、理容・美容、駐車場が20.0%、行政が9.0%、卸売り・小売りが7.6%、専門・科学・技術サービスが6.0%となっている。上位5位までの職業は、非技術的業務の23.2%、サービス・小売りの21.8%、事務の15.3%、技術者および機械オペレーターの12.2%、技術・専門アシスタントの10.5%である。このような状況で、障害労働者は2万5508ニュー台湾ドル(797米ドル)の本給と488ニュー台湾ドル(15.25米ドル)の平均時間外賃金、合計すると2万5996ニュー台湾ドル(812米ドル)を受け取っている。被用者全体の平均賃金4万1412ニュー台湾ドル(1294米ドル)と比較すると、37%下回っている。労働時間については、1週間当たりの平均労働時間は42時間であり、平均時間外労働時間は1.0時間、1週間当たりの平均労働日数は5.2日である。この結果から、障害者の時間外労働は、男女あわせた全労働者の時間外労働時間の合計が1日当たり4時間を超過してはならないと現行労働基準法は第32条で明示しているが、これを大幅に下回っているといえる。

障害をもつ労働者が職場でしばしば問題を感じると指摘することは、「障害物の少ない環境または施設」6.5%、「職務保障がない」5.4%、「職場での不公正な扱い」3.2%、「通勤問題」と「技能や興味に見合った仕事がない」がそれぞれ1.1%であった。一方、「職場に問題はない」と答えた者は非常に多く79.3%にも達していた。

11.4%の障害をもつ労働者は仕事に不満足であるが、68%のものは仕事に満足しており、そのうち特に18.9%は自分の仕事を素晴らしいと考えている。

2.失業者の現状

失業中の障害者の79.6%が「フルタイムの仕事」を希望している。また、94.4%は日中の仕事を希望し、41.0%は月給2万ニュー台湾ドルから3万ニュー台湾ドル(625米ドルから938米ドル)の収入を希望している。最も希望の多い仕事は「サービス業と小売り」の22.5%、次いで「事務」の20.7%、「非技術的業務」の17.7%、技術者および機械オペレーター」の16.1%である。政府からの援助に関しては、関係政府機関からの雇用情報の提供に対する希望が49.8%と最も多く、次いで職業訓練の提供が29.5%、迅速かつ利用しやすい就職斡旋サービスの提供が25.6%と続いている。

3.能力開発

今回の調査では、15歳以上の障害労働力の37.5%に当たる6万7000人が職業訓練や再教育に進んで参加することが明らかになった。この内、65.1%の失業中の障害労働者に、職業訓練に進んで参加したいという意思がある。訓練科目では、「コンピューターおよびソフトウェア」の受講を希望する者が31.0%と最も多く、次いで「コンピューター文書処理」が23.6%、「食物およびパン・菓子」の9.3%と続いた。一方、障害を持つ労働者が職業訓練への参加は気が進まないとする理由の上位3位は、「現在の仕事にこれ以上訓練は必要なく、仕事を変えるつもりはない」が44.8%、「すでに高齢で、これ以上訓練を受けたくない」が13.6%、「時間がない」が11.3%であった。

台湾の「就業サービス法」と「心身障害者保護法」を根拠法として、労工委員会(CLA)職業訓練局(Employment and Vocational Training Administration, EVTA)は1997年以来一連の障害者関連雇用訓練促進措置を実施してきた。これらの措置には、雇用重視の職業訓練、コミュニティー重視の就労サービス、保護重視の雇用、心身障害者保護法に基づく定率新規募集、障害者のキャリア制度に基づく雇用移行、職務再編などが含まれる。今回の調査結果は、EVTAやCLAの措置がある程度プラスの効果を挙げてきたことを示している。例えば、障害をもつ労働者の平均賃金は被用者全体のそれより低いが、「職場に問題はない」という回答が多く、仕事に満足している労働者の比率は高い。また、高い比率の失業中の障害者が職業訓練や再訓練に参加する強い自発的意志を持っていることは、大半の障害者が、政府から提供される訓練プログラムが役立つと考えていることを意味している。

しかし、一方で15歳以上の障害者のほぼ80%が労働力ではないという現状を指摘しておかなければならない。このことは、政府が心身障害者に対する現行の政策、戦略または措置を強化または改善する大きな余地があることを意味している。

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