CNE:新しいタイプの「期間の定めのない雇用契約」、2005年8月4日から前倒しで実施

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2005年9月

ドビルパン首相が発表した「雇用のための緊急計画」(2005年6月8日)のなかでも、CNEと呼ばれる新しいタイプの「期間の定めのない雇用契約」は、雇用創出、特に零細企業における雇用創出の促進に焦点をあてたものとして、注目されていた。「企業にはより多くの柔軟性を、労働者には新たな安心を」両立させ保障するという同契約は、当初、2005年9月1日の導入とされていた。しかし、雇用対策を重視するフランス政府は、早急な実施が必要と判断。従業員が20人以下の企業を対象に、2005年8月4日からの前倒し実施に踏み切った。

新しいタイプの「期間の定めのない雇用契約」(CNE)は、ドビルパン首相が掲げる「雇用のための緊急計画」のなかでも、特に注目されていた。同契約によって、零細企業は、経済状況や企業の成長に応じた、雇用調整が可能になるため、がその理由。同契約を締結できるのは、従業員数が20人以下の企業に限られる。

同契約は、基本的には、「期間の定めのない契約」(フランスでは、CDIと呼ばれる)(注1)に等しいが、大きな違いは、契約締結後の2年間に限り、企業側はいつでも契約破棄(解雇)することが可能とされていること。解雇に際し、その理由を説明する必要はない。ただし、契約開始から、6カ月未満なら2週間前、6カ月以上であれば1カ月前に、解雇を予告する義務がある。従業員には、失業保険給付資格が最初の月から生じ、この2年の間に解雇された場合、再就職のための訓練を受けることができる。2年の期間が終了すると同時に、「期間の定めの無い契約」と共通のルールが適用されることになる。

企業側は、有用な人材をフレキシブルに採用できるため、この新しいタイプの雇用契約を歓迎。代表的な経営者団体であるMEDEF(フランス企業運動)のパリゾ会長は、「我々が望んでいるフランスの成長の動きを、最も小さな企業から開始させる最初のきっかけとなる」として、高く評価。同時に、同契約を早急に導入する背景には、緊急な対策を必要とするフランスの社会経済状況があると主張した。

一方、CFDT(フランス民主労働総同盟)やCFTC(キリスト教労働者同盟)等の労働組合側は、「社会に雇用不安を与える」として反発。「従業員を犠牲にしてまで、企業の個々の柔軟性を強化する恐れがある」と主張している。CFDTのヴォワザン会長は、「この新しいタイプの雇用契約は、経済成長と就労、雇用を発展させるどころか、雇用の不安定性を招き、従業員は銀行のローンを組むことや住居を借りることが困難になる可能性がある」としている。また、「雇用や成長を最も促進する諸手段に関する基本的な議論がないまま、夏の休暇期間中に、導入の前倒しを決定した」と、政府の判断を強く批判した。

2005年8月31日、フランス政府が発表した同年7月の失業率は、9.9%(ILO基準)。10%を切ったのは、2003年10月以来21カ月ぶりのことである。失業者数については、同年6月と比べて2万5600人(約1%)の減少となった。「雇用創出」を最優先課題に発足したドビルパン内閣は、この結果を「雇用政策の成果」と評価している。新しいタイプの「期間の定めのない雇用契約」の導入は、より一層の失業率の低下・失業者の減少をもたらすことになるのか。行方が注目される。

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