バー労働者を煙から救え
―酒場労働者を受動喫煙から救うTUCキャンペーン

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年9月

受動喫煙の危険に対する認識が高まりを見せる中、喫煙場所を規制する動きが広がっている。政府が提案する「英国中のすべての職場、公共の場所での喫煙禁止令」の対象からバーなどの接客業が一部除外されていることについてTUC(英国労働組合会議)は、「バー労働者を救え」キャンペーンを展開している。

年間1200人が受動喫煙で死亡

TUCが2003年に発表した報告書によると、受動喫煙が原因で死亡する労働者は年間約1200人。多くの医学報告書が受動喫煙を心臓病や肺がんの要因であると断定している。妊婦が間接喫煙した場合、そうでない妊婦から生まれた赤ん坊の出生時体重との間に差が生じることも判明している。喫煙はもはや個人の嗜好の域を越え、受動喫煙として間接的に他人に害を与える行為だとの認識が一般化しつつある。

こうした中政府は、英国におけるすべての職場、公共の場所から喫煙を追放するという政策を発表した。この提案に関しTUCは、同措置により多くの命が救われるものと一定の評価をしているものの、対象から余暇産業や接客業など一部産業が除外されているため、こうした産業に従事する労働者も例外にしてはならないと抗議の姿勢を強めている。

バー労働者は最も危険な職種

ロンドン大学の報告によると、余暇産業や接客業に従事する労働者は、普通の非喫煙者に比べて10倍の危険に晒されている最も危険な職種であるという。こうした産業に従事する労働者は間接喫煙のせいで喘息などの疾病に罹り易く、その多くが病気のために職場を離れることを余儀なくされる。また週当たり1人のバー労働者が受動喫煙のために命を落としているという。こうした状況を見過す訳にはいかないとの立場から、余暇産業や接客業従事労働者を禁煙の保護から除くことは正当化されないというのがTUCの主張だ。

HP上からメール送付を呼びかけ

TUCのキャンペーンは、自身のホームページ上から「バーやクラブの労働者が禁煙の措置から除外されることを強く懸念する。公の場所での喫煙は毎週1人の労働者の命を奪うだけではなく多くの人の健康に害を及ぼしている。われわれは、バー及び関連産業に従事する労働者も他の労働者と同じ保護を受ける権利を主張し、全産業をカバーする喫煙禁止に拡張するよう要求するものである」というメールを保健相宛に送るというもの。

公の場所での喫煙についてはすでに、アイルランド、北米のいくつかの州・都市、ウガンダ、タンザニア、ノルウェー―など多くの国が全面禁煙に踏み切るなど、世界的に立法化が進んでいる。

参考文献

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