汚職問題でルーラ大統領の支持率低下

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  • 国別労働トピック:2005年9月

労働党の政府高官と国会議員を巻き込んだ汚職が毎日のように新たな告発を引起しており、汚職スキャンダルによる政府労働党の混乱が拡大している。ルーラ大統領は、政治危機が更に拡大することを恐れて、8月12日にテレビ・ラジオを通じて、国民に向けた説明を行った。世論調査によると、こうした一連の状況を受け、大統領の支持率は低下している模様だ。

支持率明らかな低下

世論調査会社ダタフォーリャは、8月10日に全国主要127都市で実施した世論調査により、もし現在大統領選挙を行うなら、第一次選挙でルーラ大統領は30%、サンパウロのジョゼ・セーラ市長が27%の得票率。もし過半数に達せず、上位二者による決戦投票が行われた場合、セーラ市長が48%、ルーラ大統領は38%になるとした予想結果を発表した。ルーラ現大統領に対する支持率の低下が世論調査によってはっきりと示された格好だ。

また別の世論調査会社IBOPEが8月23日に発表した世論調査結果によると、ルーラ大統領の人気は次第に下降を続けており、大統領の政権を良好または最良とする回答は29%、普通とする回答は38%、悪いまたは最悪とする評価は31%に上った。さらにルーラ大統領の行政に対する不支持は、2カ月前の38%が47%へ増加、次期大統領として投票したい人物はルーラ大統領とサンパウロのジョゼ・セーラ市長が41%の同率となったことを明らかにした。

国民向け演説の評価は分かれる

こうした事態にいたっては、大統領の国民に対する説明は不可避な状況であったと言える。大統領の演説は、労働党政権が任期2年8ヵ月のうちに達成した成果を羅列したあと、労働党が中心となって引起した不正汚職に触れた。しかしその内容は、「自分は全く関知しなかったし、知らなかった事であり、この事態によって裏切られ、失望し憤慨している。しかし自分に期待してくれた国民には詫びる」というものだった。労働党はこの大統領演説を、勇気ある高貴な行動と評価したが、野党は、部下に責任を負わせ不正の責任を逃げようとするもので、国民に対する説明になっていないと非難した。都市部では、政権の腐敗に対する抗議運動が大学生を中心に起こりつつあり、政府はその対抗策として労働党支持者による政府支持デモを行っている。

政治空白を回避できるか

経営者団体は、政治危機が政府や国会機能を停止させる事を憂慮して、国会は最低の審議機能を維持するよう政府と国会に要請している。しかし下院だけでも503人の議員のうち、約150人が裏金を受け取っていたリストに名前を連ねているといわれており、これで国会の調査委員会が不正汚職を調査できるのかという不信感が国民の間には広がっている。政治危機は日増しに悪化しており、野党の一部では大統領弾劾の可能性も検討され始めているが、国民の大勢はまだ弾劾を望んでいるわけではない。野党への対応、世論対策など難しい舵取りを余儀なくされている労働党政権だが、国民が望んでいるのは、政治空白を回避して欲しいということであり、この難局を乗り越えられるかに注目が集まっている。

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