退職手当の改革

カテゴリー:労働条件・就業環境

イタリアの記事一覧

  • 国別労働トピック:2005年8月

マローニ労働社会政策大臣は6月28日、退職手当(TFR)に関する委任立法案を提出した。今後の変更がなければ、来年の1月から退職手当(TFR)の積立金を民間の基金に充てる補足的保障制度(おおむね日本の企業年金制度に相当)が始動することになりそうである。委任立法案は、7月1日の実施に向けて、閣議前に検討されることが予定されている。しかし、労働組合は、第1草案を労使へ提示することが政府との合意で決まっていたとして、激しく反発している。中でもCGIL(イタリア労働総同盟)は、租税優遇措置に関して、憲法裁判所へ提訴する構えをみせている。同案は、これまでの案と比べて新しい点が多く盛り込まれている。とくに、退職手当(TFR)の積立金を転用する制度を国家公務員にも拡張すること、補足的保障制度の保険料に関して€5,164まで非課税とすること、ビアジ法で導入された「弾力的」従属労働者に関して特別な年金基金を創設すること等の措置が注目される。従業員に対する退職手当(TFR)の支給のために、現在企業に「滞留している」年約150億ユーロの資産の「自由化」を定める草案が、実際にどのようなことを定めているのかみてみよう。

期間は6カ月

「黙示の合意」のシステムが導入される。これは、委任立法の施行日から6カ月以内に労働者が退職手当(TFR)の積立金を移転する基金を明示するか、企業へ残すかのいずれの意思表示もしなかった場合は、使用者は、全国労働協約の定める基金(異なる定めのある場合を除く)へ退職手当(TFR)の積立金を移転するという仕組みである(なお、労働協約等の規定がない場合は、INPS(全国社会保障機関)の補足的年金基金へ組み込まれる)。

給付に対するボーナス

補足的保障制度の給付に関しては、15%の税金が賦課されるが、15年を超える保険料納付に関しては、1年につき0.3%分を非課税とする(したがって、35年間の保険料給付については税率が9%となる)。この点に関して、CGILは、補足的保障制度か強制的保障制度かに応じて課税方法は異なるべきだと強く反発している。

受給の繰上げ

被保険者、その配偶者または子は、重大な家庭の事情または重大な健康上の事情がある場合に、積立分の75%を請求することができる。さらに、制度加入から8年後は、被保険者自身またはその子のための初めての住居の購入費に使う目的で、50%を超えない額を繰り上げ受給することも可能である。これ以外の目的の場合でも、30%の繰上げ受給が認められる。

企業には4%を

これまで、退職手当(TFR)は、企業にとって一種の「自己金融」であった。補足的保障制度に退職手当(TFR)の積立金が充当されることで、企業はこの資金を手放すことになるわけであるが、それを埋め合わせるために、委任立法案は、年金基金に充てる退職手当(TFR)の積立金額の4%を企業所得から控除することができると定めている。なお、従業員数が50人未満の企業については、6%の率が適用される。

個別保障方式も可

労働者は、退職手当(TFR)の積立金を、年金基金だけでなく、生命保険会社を利用する個別保障方式の保険料としても充当することができる(ただし、当該保険契約がCOVIP(年金基金監視委員会)の命令に基づいて作成された規則を添付してある場合に限る)。

払い戻しの規定

年金基金の規約は、12カ月以上48カ月以下の不就労の場合には積立金の50%の払い戻しを、恒久的障害または4年を超える失業の場合は全額の払い戻しを定めなければならない。

参考

  • Corriere della Sera紙2005年6月28日付

2005年8月 イタリアの記事一覧

関連情報