フィンランド製紙産業の労使紛争に対し、スウェーデン労組が同情ストを断行

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年7月

フィンランドの製紙産業では、労働条件をめぐる深刻な労使紛争が発生した。5月中旬に始まったストライキとロックアウトは、スウェーデンの労働市場にも大きな影響を及ぼし、スウェーデンのブルーカラー労働者の組合が、フィンランドの製紙産業労働者を支援するために同情的なストライキを断行する事態に発展した。

フィンランドの製紙産業の使用者側は、労働時間や休暇に関する柔軟性の強化を盛り込んだ労働協約の改定を組合側に要求した。柔軟化の対象として挙げられたのは、1)企業の産業医のみが傷病を認定できるよう傷病手当制度を厳格化、2)クリスマスおよび真夏の期間の休日の削減、3)労働組合との協議なしに4交代から5交代へのシフト制の変更を可能とする労働時間制度の柔軟化、4)5週間の休暇日程の設定を使用者側の一方的な裁量とすること、5)労働組合との協議なしに下請企業と契約する自由(清掃、修繕などの業務)――などである。労働組合側は、代償として、基本的には労働時間の短縮を求めた。使用者側は、経済的補償とわずかな労働時間の短縮を提示したが、労働組合は不十分な内容であるとしてこれを拒否した。労使はまた、外国人労働者の雇い入れに関しても意見が対立した。労働組合側は、5月15日に短時間の制限的なストライキを開始した。これに対し使用者側は5月18日、すべての製紙産業労働者に対するロックアウトを断行した。

フィンランドの製紙産業労働組合と近い関係にあるスウェーデンの製紙産業労働者組合は、4月に同情的行動を開始した。スウェーデンの労働組合は、フィンランドの労使紛争で使用者側が勝利した場合、スウェーデンの製紙産業が次なるターゲットとなることを恐れていた。そのため、フィンランドの生産がスウェーデンに移管されないよう、フィンランドの製材所や製紙工場からスウェーデンに運ばれてくる材料や商品には一切手を触れないこととした。そして5月16日~18日には、Stora Enso社において、すべての時間外労働を拒絶する戦術に出た。さらに組合側は、5月25日、Metsi-Tissue社、M-real社、The Ahlstrom社を加えたフィンランド系の4製紙会社の16工場において、時間外の同情ストライキを断行した。ストライキには、スウェーデンの製紙産業労働者6300人が参加した。

製紙産業労働組合は、他産業の労働組合にも参加を呼びかけ、6月2日には、スウェーデン建設労働者組合が時間外のストライキを開始し、電気工組合、金属産業労働者組合、森林労働者組合がこれに続いた。

フィンランドのヴァンハネン首相は6月27日、製紙産業の労使代表を首相官邸に呼び、早期の解決を求めた。労使は7月1日、調停案を受け入れ、7週間に及んだ労使紛争はようやく解決した。これを受けて、スウェーデンのフィンランド系の製紙会社の16工場において実施されてきた時間外の同情ストライキも7月1日に中止された。

この紛争は、フィンランドの製紙産業に、GNPの1%に相当する15億ユーロの損害を与えたと試算されている。また、スウェーデンの製紙工場における時間外労働の拒絶による損失は、3000万~5000万スウェーデン・クローネ(SEK)と見積もられている。

スウェーデンの労働法制は、原因となったストライキが合法である場合の同情ストライキを認めている。また、当初の紛争に関係のない労働組合も同情ストライキを行うことができる。「職場における共同決定法」は合法的な2次的労働争議の条件を規定している。スウェーデン企業連盟(SN)は、「外国で起こった紛争によってスウェーデンの生産が損失を受けるのは不当である」として、法律改正の必要性を強調している。社会民主党政権及びスウェーデン労働組合総同盟(LO)は、現行制度の維持を強く主張している。労使関係法制の改革は、2006年9月のスウェーデン議会選挙に向けての主要な政治課題の一つとなりつつある。

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