全世界で1200万人強が強制労働に従事
―ILOグローバルレポートより

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2005年7月

ILOが5月に発表した報告書「強制労働に反対するグローバルな同盟」によると、全世界で少なくとも1230万人が強制労働に従事していることが明らかになった。強制労働は、地域、産業によらず世界的に存在する問題であると報告書は述べている。

報告書は、1998年に採択された「仕事における基本的な原則と権利に関する宣言」のフォローアップとして、2000年より毎年ILO総会に提出されてきた。今回初めての試みとして、世界及び地域別に強制労働の実態を示す統計データが掲載された。それによると、全世界の約1230万人の強制労働に従事する者のうち、約5分の1に当たる240万人以上が人身取引の被害者であるとしている。また、人身取引において搾取側が得る利益は毎年320億ドル(人身取引被害者1人当たりでは平均1万3000ドル)に達するとしている。

地域・分野別分布

強制労働の従事者を地域別に見ると、アジアでは最も多い約950万人、次いで中南米・カリブの130万人、サハラ以南アフリカの66万人と続き、先進国でも36万人存在する。農業、建設業、インフォーマルな製造業工場などでは男女差はないが、強制的商業的性搾取の場合は、被害者のほぼ全員が女性である。また、18歳未満の子どもは強制労働の被害者全体の4~5割を占める。

強制労働の新動向が提起する政策課題

強制労働のほとんどは依然途上国で見られ、先住民など少数民族は貧困の悪循環に閉じ込められている。また、グローバル化の中で新たに登場した強制労働の被害者に、外国人労働者、特に、非正規移民が挙げられる。

ILOの協力を得て強制労働撤廃のプログラムが実施された国の中には成功例も出ており、取り組みとしては、法律の制定と実効性のあるメカニズム作り、根本的原因をなくす政策やプログラムの実施、被害者の生活支援などが行われた。ILOは、政府や国内機関が積極的な政策を遂行し、反人間的な処遇撤廃に向けた強い意志を持つことにより、強制労働は根絶可能と述べている。ソマビアILO事務局長は、「強制労働はグローバル化の負の側面であり、人々の基本的人権を否定する。公正なグローバル化と全ての人々にディーセント・ワークを達成するために、強制労働を根絶しなければならない」と述べた。

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