政府調達に関する労働協約の条件

カテゴリー:外国人労働者労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年6月

元労働組合幹部のハンス・カールソン労働大臣とエーリック・オステルベリィ地方自治担当大臣は、公的機関はスウェーデンの労働組合が承認した労働協約を締結している企業からのみ、財やサービスを購入すべきであると提案した。これは、政府調達に参加する外国企業にスウェーデンの労働協約に基づく労働条件を遵守するよう義務づけるための法整備の必要性に言及したものである。

昨年来、政府や労働組合は、EU拡大に伴うサービスの自由化と競争の激化による脅威を感じてきた。サービス自由化の拡大は、昨年のラトビア企業の賃金をめぐる労使紛争に見られるように、スウェーデンで長年続いてきた団体交渉制度を相当脅かしている。

昨年、ストックホルム近郊の学校建設工事を受注したラトビア企業のL&P社は、雇用するラトビア人労働者に対し、ラトビア水準の賃金を支払っていた。L&P社は、スウェーデンの建設労働者組合とモデル労働協約を締結することを拒絶し、スウェーデンの5分の1の賃金水準を規定したラトビアの労働協約は欧州連合(EU)の法制度の基準を満たしていると主張した。スウェーデンの建設労働者組合は工事現場の封鎖を断行し、最後には、地方政府がスウェーデン企業に工事を再発注し、ラトビア企業が破産を宣告する事態に至った。スウェーデンの労働裁判所は、スウェーデンの労働組合には労働協約を守るために現場封鎖を実行する権利があると判示し、ラトビア企業はこの事件を最高裁判所に控訴した。最高裁は控訴を棄却し、事件を労働裁判所に差し戻した。4月29日、労働裁判所は、事件に関する判断をなんら示さず、欧州裁判所の判断を仰ぐ見解を表明した。

労働大臣と地方自治大臣は、4月末、税金は、劣悪な労働条件を補助するために支出されるべきではないとして、公的機関がスウェーデンの労働協約に署名していない企業(外国企業を含む)と財やサービスの供給に関する契約を締結することを禁止する法律の必要性を訴えた。両大臣は、中央及び地方政府に製品やサービスを供給する企業に対する政府の社会的要求権について規定したILO 94号条約にも言及した。スウェーデンは、同条約が規定する条件は、労働協約で担保されているとして、条約を批准してこなかった。また、昨年採択された政府調達に関するEU指令をいかに国内法へ取り込むかも議論となっている。もしEU指令がILO条約と矛盾しない場合、スウェーデンはILO条約の批准を検討すると見られる。

使用者や多くの政治評論家は、より安価で財やサービスを手に入れる機会を消費者から奪うものであるとして、両大臣の提案に強い反対を示した。

毎年、スウェーデンの中央・地方政府は、4000億スウェーデン・クローナにのぼる財・サービスを購入している。労働大臣と自治大臣は、もしスウェーデンの団体交渉で設定された標準以下の労働条件や賃金で財やサービスを安価に提供しようとする企業があったなら、公平な競争とはならない。政府は、スウェーデン労働市場の規則に従うまじめな企業とのみ取引すると述べている。

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