OECD(経済協力開発機構)閣僚理事会開催される

カテゴリー:雇用・失業問題人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2005年6月

2005年5月2日、3日の2日間に渡り、経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会が開催され、その内容が5月4日事務局により報告されている。今会合の統一テーマは、「グローバリゼーションの実現」ということで、OECD加盟国閣僚により経済動向とグローバル化の進展にともなう構造調整をいかに効率的に進めていくかについて各方面からの検討が行われた。会期中にはフォーラムも開催され、非加盟国との対話、BIAC、TUAC、市民社会代表との対話などが積極的に展開された。

閣僚会議では、成長と持続可能な開発、エネルギー投資の促進、構造改革の推進、貧困の削減とドーハ開発アジェンダの達成を、G8サミット、国連、WTOとの関係で首尾一貫した方法で推進していくことが重要であることが確認された。議長(スウェーデン)による総括の要点を紹介すると以下のとおりである。

経済概観

具体的には、原油価格の急激な高騰による経済成長への影響を考慮しつつ、構造改革を成し遂げていくことで、内外不均衡、経常収支格差の拡大、財政赤字などを乗り切り、緊張とリスクを回避しなければならないことが確認された。また、公共財政を持続可能なものとするために、年金財政の確保など人口の高齢化に伴う諸問題への対応が今後の大きな課題となることが指摘された。

エネルギーへの投資

2030年までにエネルギー需要と二酸化炭素排出量は60%増加することが予想される。環境や気候への影響を減らす努力が需要である。また、エネルギー価格の不安定な高騰に対処する必要性を強調。生産者、消費者双方が需要と供給の双方に関して慎重に対応する必要がある。市場安定のため、産油国との対話と透明性向上の推進が重要である。さらに経済社会の発展のため、1)市場原理に基づく政策、措置、2)技術への投資、移転、普及のための透明で安定した世界的に一環したメカニズム、枠組みの構築、3)持続可能なエネルギーシステムのための研究開発、4)政府と産業間の協力――により、効率的にエネルギー資源を活用しつつ、エネルギー市場の自由化と途上国のエネルギー資源への平等なアクセスを促進していくことが必要である。

グローバリゼーションと構造調整

OECD「サービス分野における成長」「貿易と構造調整」研究を評価。ベストプラクティス、政策対応、調整課題について積極的に研究し、経験を共有していくことが重要である。個人、地域、国家に対する調整課題は適切に処理され、グローバリゼーションの恩恵をすべての人がうけられる政策となる必要がある。また、構造調整を推進するための重要な要素は、安定と成長を推進するマクロ経済枠組み、ソーシャルセーフティネット、効率的な規制枠組み、開放的な貿易・投資政策、人的資源開発、能動的な労働市場政策、生涯学習、イノベーション政策であり、経済、社会、環境に関して持続可能な政策を策定する必要性と非効率なパターンは積極的に改革していく必要がある。特に、雇用、生産性、技術革新において潜在性のあるサービス部門の改革はOECD諸国の将来的パフォーマンス基盤として改善が不可欠である。

ミレニアム開発目標の達成

加盟国の貧困と飢餓の削減、すべての人への教育の実現、AIDSや他の疾病との戦いというミレニアム開発目標を達成するための「国連ミレニアム宣言及びモンテレイ合意のフォローアップ声明」を行い9月の国連ハイレベル特別会合に提出する。

ドーハ開発アジェンダと貿易交渉

12月のWTO香港閣僚会議にむけ、準備を進めることで各閣僚と合意した。2006年末までにドーハ開発アジェンダから野心的な結果を導き出すよう緊急の意識を持って取り組むことを呼びかけた。農業問題がキーとなるが、関税換算方法の問題の解決など農業分野のすべての問題について交渉を前進させることが重要である。途上国はドーハ開発アジェンダの結果が利益として反映されることに関心がある。OECDは、途上国が貿易機会活用ために重要である制度構築改善を含む技術協力の強化と能力開発を支援することが主要な役割となる。また、加盟各国は、適切で、社会的責任を意識した国内政策の推進が期待される。その意味でOECDの行う「貿易と構造調整の研究」は価値ある分析を提供している。

OECD改革

非加盟国との戦略的な協力へ向けた措置が歓迎される。「多様な関与戦略」を開始するための原則の進展、将来の拡大を意識したOECDのガバナンスの改善方策に取り組み、機能強化を図ることで合意があった。2005年7月末までに機構を設立することを理事会に要求した。

一方、今回の閣僚会議に対して、OECDの経済産業諮問委員会(BIAC)と労働組合諮問委員会(TUAC)がそれぞれ声明を発表した。

経済産業諮問委員会(BIAC)は、エネルギー分野への投資戦略とグローバリゼーションと構造調整への戦略を柱とした声明を発表している。エネルギー分野への投資戦略については、エネルギーの需要と供給の多様化にあわせ、長期的視点から資源確保の改善を政府は支援することが重要であることを主張している。

また、グローバリゼーションと構造調整へのOECD戦略については、ドーハ開発プロジェクトにより貿易の自由化が進展し、OECD加盟国での交渉が実りあるものとなるよう促進していく方針である。市場開放により従業員、企業にさまざまな機会がもたらされることを評価するとともに、特にサービス部門に関するプロジェクトが追加されるよう求めている。労働市場と社会政策との関係においても、人的資源の柔軟な管理、積極的で包括的な労働市場、雇用政策、福祉政策の推進の必要を強調し、使用者は事業所、工場や仕事に特有な技能訓練の機会を提供することで、人的資本の蓄積と生涯教育などへの投資を促進していくことを確認している。

労働組合諮問委員会(TUAC)のスタンスは、世界に存在する貧困とグローバリゼーションにより脅かされる労働者のための経済的不安を削減するために、雇用の問題が今回のアジェンダの中心であるべきであるというものである。また、OECD財務閣僚、各国の中央銀行は、組織的イニシアチブを通じて変容する労働市場における人的資本投資、技能向上、所得保障について国際的需要と雇用成長のバランスに留意して連携パッケージとして実施していく必要があることも主張。中国に対してはバランスと質的成長に留意することを要求しており、特にILO基準に則し、結社とストライキ権の自由に基づく、活力ある市民社会と組織的にイニシアチブをもった組合の構築が必要であることを強調した。WTOは、ILO,OECD,世界銀行、国際通貨基金(IMF)や国連の関連組織との関係を強め、繊維産業の発展の社会的影響をもっと重視する必要があることも指摘している。

さらに、オフショアによる雇用への影響、政府による労働者の基本的権利の保障、積極的労働市場における労使の協定への支援などを呼びかけている。経営環境が多様化するなかで多国籍企業の行動指針であるOECD多国籍企業ガイドラインに関しては、好事例の基準を確立し政府によるガイドラインの実施の徹底の必要性を指摘。また、コーポレートガバナンス原則の改定について支持を表明。国連ミレニアムプロジェクトについては加盟国の支援の強化の必要性を強調。エネルギー、環境、疾病の予防へ積極的に対応していくべきであることを確認している。

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