企業ニーズにマッチした高度技能訓練に関する最新事情
マレーシアにおいては、ますます競争が激化する経済環境において、企業は理論と実践的技能を持ち合わせた人材を必要としている。企業が求める能力も高度化しており、そうした基準に合致するような教育訓練の必要性が指摘されている。学卒失業者や若年の失業問題を抱える人的資源省では、長期・短期の対策を組み合わせて、企業のニーズにマッチした人材を育成しようと試みている。
1)大学在学中に職業訓練により技能習得
長期的対策として、人的資源省は高等教育省と連携し、新たな教育訓練の仕組み作りを試みている。4月中旬の発表によると、人的資源省では、大学と職業訓練校を提携させ、学生が大学の課程の中で、技術を習得できるような時間割の作成に着手したとのことである。実現すれば、学生のうち希望者は、学業と並行で週に1~2度、職業訓練校の授業に出席することができる。例えば、理系の学生がスポーツカーの点検整備のコースや、機械工学上級コースを履修することができる。あるいは、クッキーやパン調理のコースを履修することもできる。
人的資源省は本プログラムの実現に向け、高等教育省以外にも連携の輪を広げている。航空宇宙センターとなることが予定されているスバン空港(クアラルンプール郊外)で、セランゴール州の州都シャーアラムの高等技術専門校の学生が、航空機整備工学のような実用的なコースを履修できるようにするよう運輸省に要請中とのことである。
この措置により、学生の実用的な技能の習得が可能になる。訓練の成果によって、学卒者の労働市場でのニーズが高まり、若年の高い失業率を緩和・解決する一助となることが期待される。
2)失業中の学卒者への再訓練
次に、短期的対策として、人的資源省は、6月より始まる学卒失業者対象の再訓練計画のコースを見直し、英語力、コミュニケーションや対人関係等のソフトスキル、チームワークの3点に焦点を絞って行うことにした。人的資源省は、初期段階において少なくとも約2万人の学卒失業者を再訓練する計画である。彼らはコースを受講すると、6カ月のコースの履修期間中、月に300リンギ受給することができる。ちなみに、従来はコースの履修費用を政府が負担し、更に受講中、月に500リンギの手当てを支給する手厚い制度であった。手当て目的でのコース受講者を減らすため、政府は4月に本制度を廃止する方針を明らかにしたが、多くの学卒失業者が経済的に困窮し、必要なコースを履修できない状況にあることから、5月に入り、廃止をとりやめたとのことである。
政府は学卒失業者へ上記の支援を行うが、学卒者自身の自助努力も欠かせないと述べている。ソフトスキルの不足については、若年者の就職難の一因になっているとの指摘もあり、人的資源省は学生にソフトスキルの習得を奨励し、企業が求める人材の育成を促進したい考えだ。
参考
- 2 April 2005, The Star, Lack of ‘soft skills’ hindering grads from getting jobs
- 14 April 2005, The Star, Skills training for undergrads
- 27, April, 2005, Bernama, Graduate Re-Training Scheme To Be Revived
- 13 May 2005, The Star, Grads get help with English
関連情報
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