失業保険制度改革

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2005年6月

政府は、4月末、失業保険法の将来に関する社会経済審議会の勧告を全会一致で採択した。勧告は、1)受給期間の短縮(全体、若年者)、2)受給資格要件の厳格化、3)当初2カ月の支給水準の引き上げ――などを内容としている。

昨年秋、政府の社会保障制度改革に対する大規模な大衆抗議行動が発生した。政府は事態を沈静化させるため改革案の大幅修正に応じ、11月初めに修正内容を盛り込んだ政労使合意が成立した。合意には、失業保険制度の改革を政労使による社会経済審議会の検討に委ね、審議会の勧告が出るまで延期することが明記された。

今回政府が採択した勧告よると、将来的に、失業手当の最長受給期間は、現行の5年から3年2カ月に短縮される。さらに、失業手当の受給資格となる就労期間がより厳格化され、現行の直前39週間のうち26週間就労という条件が、直前36週間のうち26週間就労に変更される。他方、当初2カ月間の失業手当の水準は、現行の最終賃金の70%から75%に引き上げられる(3カ月目以降は70%)。また、若年労働者の失業手当の最長受給期間も、6カ月から3カ月に短縮される。過去5年間のうち4年間は、少なくとも年間52日就労していなければならないという受給資格要件に該当する者(主に若年者)は、現在、最低賃金の70%の失業手当を6カ月間受給している。この受給期間が3カ月に短縮され、当初2カ月が最終賃金の75%、最後の3カ月目が70%の水準となる。

政府は、今回の審議会の勧告を現状を打開する突破口になるものであると評価した。勧告は、若年者と高齢者の間の社会保障権のバランスに焦点を当て、失業手当を「行き止まり」ではなく「2つの仕事の架け橋」により近づけるものであるとしている。

失業手当の最長受給期間の短縮は、より多くの高齢者に仕事に留まってもらう、あるいは仕事に早く復帰してもらうため戦略である。新しい失業保険制度は、求職者支援により重点を置いている。適切な時期に就職支援を行うことは、失業の予防にも役立つと期待される。失業した高齢者には、失業手当の受給期間が終了した後、無所得者向けの特別な福祉手当の受給資格がある。50歳以上の失業者は、この特別手当を受給する前に、個人資産をすべて使い果たす必要がなくなった。60歳以上の失業者は、特別手当の受給資格認定に当たり、配偶者の所得を考慮しないこととされた。これらの条項は、一時的に導入され、2010年に再検討が行われる。

政府はまた、労働市場をよりダイナミックにするための解雇法制の緩和を実施する。解雇の際に使用者と労働者のどちらに責任があるかを決定する手続き(現行はこの手続きが失業手当の受給資格を得る条件となっている)をより簡素化した制度を試験的に導入する。これは、「司法前段の手続き」を省略し、使用者、労働者、裁判所の負担を軽減するものである。結果として解雇にかかる費用が低下し、手続きがより簡素化される。

政府は、先に先任権制度の原則は、大規模な組織再編においてはもはや重要な要素ではないとし、かわりに労働者参加の原則を適用することとした。これにより解雇が組織内の異なった年齢階層間でより公平に実施されるとしている。

参考

  • オランダ社会問題雇用省ホームページ

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