国政選挙を今年秋に前倒しへ

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2005年6月

5月22日に実施されたノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州議会選挙で与党社会民主党(SPD)が大敗したことを受け、シュレーダー首相は同日、2006年9月に予定されていた連邦議会選挙を前倒しし、今年秋に行う意向を表明した。NRW州では有権者の雇用情勢に対する不満が選挙結果の要因であると見られており、今後、シュレーダー政権の労働市場改革を柱とした改革路線について、激しい議論が展開されそうだ。

NRW州の選挙結果は、野党キリスト教民主同盟(CDU)が得票率44.8%、SPD37.1%、緑の党6.1%、自由民主党(FDP)6.1%。これまでは国政と同様SPDと緑の党が州の連立政権を担っていたが、今回の結果を受けてCDUとFDPが連立を組む可能性が高い。議席数は、CDUに89、SPDに74、緑の党およびFDPにそれぞれ12が割り当てられる。SPDは同州で39年間政権を維持してきたが、今回は1954年の得票率(34.5%)に次ぐ低得票に終わった。

NRWはドイツ最大の州であり、06年秋に予定されていた総選挙前の最後の州選挙だったため、もともと大きな注目を集めていた。そして、敗北が確定的となった選挙当日の夕刻、シュレーダー首相は、この選挙結果によって「われわれの仕事をさらに進めるための政治的基盤に疑問が投げかけられた」と述べ、連邦議会選挙前倒しの意向を表明した。

ドイツでは、憲法に相当する基本法によれば、首相自身は解散権をもたず、首相が連邦議会に信任案を提出し、そこで過半数に達しない場合、大統領が議会を解散する。このためシュレーダー首相はケーラー大統領と協議を行う一方、24日にSPDの役員会で総選挙前倒しの方針を確認した。同首相は7月1日にも信任案を出す予定で、その後の手続きが順調に進めば、9月11日か18日のいずれかに連邦議会選挙が行われることになる。

今回のNRW州議会選挙の背景には、経済・雇用情勢の悪化が影を落としている。ZDF(ドイツ第2テレビ)の出口調査では、55%が州の経済状況を「悪い」としており、前回選挙時(2000年5月)の15%を大きく上回った。また、「雇用の創出」についてSPDを信頼するとした人は18%(前回は43%)で、CDUを信頼する人が39%(前回は23%)に達し、5年前と立場が完全に入れ替わった。

この逆境のもとで総選挙を今秋に実施する賭けに出たシュレーダー首相だが、失業給付制度を大幅に見直した労働市場改革など「痛みを伴う」政策に対し、伝統的支持基盤である労働者層の反発が強い一方で、失業率は高止まりしたまま目立った改革の成果は出ていない。世論調査の支持率でも、CDUおよび姉妹政党CSU(キリスト教社会同盟)に大きく水をあけられている。

このような事情を背景に、SPD党首のミュンテフェリング氏は、4月中旬に「一部の資本家は人々について何も考慮せず、その職場を根絶やしにしている」と述べ、利益をあげながらドイツ国内の雇用に貢献しない経済界と外国資本に対する批判を展開した。この「資本主義批判」は、その主張そのものについて一定の共感を得た(国際比較・ドイツ 6月記事参照)。しかし、この発言を選挙目当てと受け取った人も多く(週刊誌『シュピーゲル』の調査によれば回答者の57%がそう感じている)、政党支持の回復にはつながらなかった。

DGB(ドイツ労働総同盟)のゾマー会長は、今回の州選挙結果を受けて出した声明の中で、政党に対するポジションを「中立」であるとし、来たる総選挙では「生活を保障する賃金、社会国家(Sozialstaat)の発展、共同決定システムと労使自治の原則がかかっている」と述べている。シュレーダー政権の看板政策「アジェンダ2010」とその重要な核である労働市場改革政策についても、大規模な議論が展開されることになりそうだ。

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