ポーランドと欧州憲法批准

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2005年6月

ポーランドでは欧州憲法の批准に関する国民投票が10月に予定されている。しかしフランスで5月29日に行われた国民投票の結果、欧州憲法の批准が否決されたことは、同憲法に関するポーランドのスタンスに影響を与える可能性がある。

欧州憲法の下でEU域内のサービス市場の自由化が進めば、西欧諸国の労働者の雇用は低賃金で働く東欧諸国の労働者に奪われるのではないか-。東欧最大の国ポーランドは、そうした「東欧の脅威」の象徴ともいえる。ユーロスタットの統計(注1)でポーランドの従業員1人当たり労働費用(2001年)をみると、例えばフランスの3万7000ユーロに対し、ポーランドは8000ユーロと四分の一未満である。

そのポーランドでは、欧州憲法批准の国民投票が10月9日、大統領選挙と同時に実施される予定である。これまでのところ、ポーランド国民の多くが欧州憲法を支持している。世論調査では支持派が56%で、反対派は15%であった。しかしフランスの国民投票の結果は、ポーランドをはじめとして欧州憲法を未批准の国々の世論に影響を与える可能性がある。

首相「批准に向けて手続きを進める」

フランスの国民投票の結果が明らかになった5月31日、ポーランドのベルカ首相は国民投票を予定通り行う考えを表明した(フィナンシャル・タイムスほか)。しかし、10月にはベルカ首相は政権を退いている可能性が高い。9月25日に行われる国会総選挙で、野党の中道右派が政権を握ることが世論調査の結果から有力視されている。野党は欧州憲法の批准に反対しており、国民投票を回避したい姿勢である。今後の政権の行方によっては、国民投票は延期されるか、中止もあるとみられている。

フィナンシャル・タイムスによれば、野党が欧州憲法に反対する理由の一つは、フランスやドイツが反市場のための規制をポーランドに課すことになるという懸念だ。また野党「市民プラットフォーム」(PO)のある幹部によれば、今回フランスが欧州憲法を否決したことも反対論を補強するものだ。今後は国家間の様々な交渉場面において欧州憲法に反対する国々の発言力が増す可能性があり、ポーランドが国民投票で批准を可決することは、自国の交渉力を弱めることにつながるというのだ。

欧州憲法に対するポーランド国民の姿勢は今後どう変わっていくのか。批准に関する国民投票は行われるのか、その先行きは不透明である。

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