新労働者退職制度に基づく労働者退職管理委員会の設立

カテゴリー:高齢者雇用労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年5月

「労働者退職年金法」は、2004年6月30日総統により公布され、1年後の2005年7月1日から施行されることが決まっていた(海外労働事情2004年8月参照)。すなわち今年7月1日から新しい労働者退職制度がスタートすることになる。

新制度の詳細な仕組みへの使用者と被用者の注目は実施を直前に控え、ますます高まっている。マスメディアは、労働者年金法に関して、既に発表された規則と今後施行が想定される規則や使用者、被用者、学者、専門家の見解、一般大衆の反響を毎日のように取り上げている。また、労働者年金法に関する労工委員会(CLA)、郡、商工組合、労働組合などが主催する大規模なセミナーや教育コースは300以上(出席者200名以上)、経営コンサルタント、会計会社、保険会社はこぞって指導会やシンポジウムを後援している。

これまでのところ、中央監督官庁であるCLAは、「労働者退職年金法施行規則」と「月給・掛金率表」を含む、「労働者退職年金法」に基づく16規則の内2つを発表してきた。他の14の規則はまだ策定中である。この内、「労働者退職監督委員会の設置を管理するための規則」には、使用者、労働組合、国際的な資産管理組合までもが非常に高い関心を寄せている。

「労働者退職年金法」では第4条で、「中央監督官庁は、労働者年金基金に関するあらゆる事項を検討、監督、監査し、LPAに基づき年金保険制度を実施するため、労働者年金基金監督委員会を設置する」ことを義務付けている。同監督委員会は独立してその権限を行使する。監督委員会の組織、会議、その他の事項について他に法律が定められる。また、新しい監督委員会の設置後、現行の労働基準法第56条第2項に従って設けられた旧労働者年金基金の運営管理は、新設の監督委員会が担当し、調整することになる。したがって、旧委員会の権限は監督に限定されることになり、新設の労働監督委員会は、労働基準法に基づく旧労働者退職監督委員会とは異なるものとなるはずである。新委員会の権限は監督だけではなく、基金運用の運営も含まれることになる。毎年この基金のために配置される400人程の被用者にかかる費用は、約1500万新台湾ドルと見積もられている。同法改正に基づき、今年7月1日に旧委員会から振り替えられる約3500億新台湾ドルの基金を加算すると、労働者年金基金は確実に国内最大の政府基金になる。

一方、新しい年金制度の基金運用は、労働者が退職した場合に受け取る金額を決定する。旧労働者退職制度と新労働者退職制度の最も重要な相違は、旧制度は確定給付型であるのに対し、新制度は拠出給付型である点、旧制度では労働者の勤続年数は転職の際、継続扱いで計上されないが、新制度では転職した場合でも勤続年数が継続扱いで累計される点である。一般に、労働者が新制度の下で受ける退職給付額は旧制度より少なくなる。また、転職や廃業により退職給付を受給できなくなるリスクもますます高まっている。

こういった状況下、新設の労働者退職管理委員会では、新しい労働者退職基金の効果的かつ効率的な運営で、旧制度と新制度の給付のギャップを縮小、排除または超越する役割を果たせることが期待されている。これが、新設の労働者退職監督委員会の組織と運営に非常に高い関心が寄せられている理由である。

労働者退職監督委員会は、公法人として設立されるが、その目的は、組織の設立、運営、管理を監督し、基金をより効率的かつ柔軟に利用することが期待されている。また、その目標は、労働者の老後の生活を守るため、これからの年金基金が最高の成果をあげることである。労働者退職監督委員会の組織原則は次のとおりである。

  1. 独立性

    権限において独立と自立した行使を精神とする。プロ意識を持つことが労働者年金制度実施の重要なポイントである。したがって、投資決定プロセスでは外部の干渉を排除しなければならない。

  2. プロ意識

    委員会は、使用者、労働組合、政府の役人、学者、専門家の代表者が財務管理、投資管理、リスク管理のプロと共に委員会を構成すべきである。これらの人々の監督と運営管理の専門性を最大源活用することが最優先事項となる。

  3. 安全性

    投資リスクと取引リスクを管理し予測するため、包括的な外部と内部の市場リスク管理メカニズムを確立し、監督を強化して基金の運用を高める。

  4. 透明性

    大衆が情報を入手できるようにするため、情報の透明性を確保する目的で財務・運営情報を定期的に公開する。

上述の労働退職管理委員会の組織管理規定である「労働者退職監督委員会の設置を管理するための規則」は、CLAの委員会会議で討議・承認された後に行政院(内閣)において承認された。

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