拡大する低賃金労働

カテゴリー:労働条件・就業環境

メキシコの記事一覧

  • 国別労働トピック:2005年5月

メキシコ国立統計庁(INEGI)のデータを見ると、現政権下では工業・サービス業・公部門等のフォーマルセクターで働く就業者数が減っている。全国都市部雇用アンケートによると、2004年12月の時点で「上級公務員、管理職」は2年前と比べ12万6000人、9.9%減っており、「工業部門労働者」も1156万人から1140万人に減っている。

一方、最低賃金に満たない額で働く労働者や、零細企業で働く者が増えていることを示すデータがある。INEGIの3月の発表によると、最低賃金以下の賃金で週48時間以上働く労働者数は585万1000人で、過去2年間で22%も増えている。「無報酬の就業者」は7%、「無報酬の賃金労働者」は14.4%の増である。

また事業所の規模別にみると、従業員1人~5人の零細企業で働く労働者は1900万人近くにのぼり、2002年と比べて2.7%(50万3400人)の増となっている。中でも「商人、売り子、その他」に分類される労働者は872万7000人で、2年前と比べ3.3%の増である。

これらのデータからいわゆるインフォーマルセクター、あるいは零細企業での就業者が増えていることが示唆される。 INEGIによれば「インフォーマルセクターは不安定な雇用事情、労働市場における機会の少なさと深く結びついている」。実際、職や収入減が一切ないメキシコ人は109万2692人にのぼり、彼らにとって唯一手っ取り早い生活手段になりうる選択肢はインフォーマルセクターしかない。具体的には公道での物売り、荷運び、タクシー運転手、各種修理業、家事労働等、「資本が非常に少ない、もしくはゼロで、すぐに利益が得られる」仕事である。

メキシコでは公道で商業活動を行う物売りの数は120万人に達し、首都メキシコシティーだけでも30万人にのぼるとされる。彼らが扱う商品は家電製品、パソコン、繊維製品、靴、玩具、ビデオゲーム、レコード、パソコンソフト、酒類、本、バッグ、学用品など多岐にわたるが、その多くが盗難品、密輸品、著作権の侵害による剽窃品ではないかとの見方もある。

メキシコシティーの商業・サービス業・観光業会議所(Canaco)が過去数年にわたって続けてきた調査によれば、この種のインフォーマルな商業活動は正式な商店小売業者に対して年間1100億ペソの損失を与えており、商店3000軒の閉店、1万5000人の雇用喪失につながっているという。また税収面でも、メキシコシティーだけで96億ペソの減収につながっているとされる。Canacoでは、公道でのインフォーマルな商業を取り締まれば、これと直接に結びついている密輸、盗難、剽窃といった犯罪行為も少なくなるはずとしている。

2005年5月 メキシコの記事一覧

関連情報