労使による補足的保障制度案

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

イタリアの記事一覧

  • 国別労働トピック:2005年5月

Confindostria(イタリア産業総連盟)、Confcommercio(商業同盟)、Confartigianato(職人同盟)およびConfapi(イタリア中小産業同盟)ならびにCGIL(イタリア労働総同盟)、CISL(イタリア労働者組合同盟)、UIL(イタリア労働連合)およびUGL(労働総連合)は、2005年2月17日に、労働社会政策省に対し補足的保障制度(previdenza complementare)に関する共同合意を提出した。この合意は、政府が補足的保障制度の促進に関して近々公布すべきことになっている実施令の決定の際に考慮すべきものとして、労使から提出されたものである。

この案は、被用者に関する補足的保障制度の決定および集団加入型の補足的保障制度と個人加入型の補足的保障制度との区別に際し、団体交渉が中心をなすことを基本原則としている。共同合意では、労働者が明示的に自らの意思を表明しなかった場合の退職手当(TFR)の積立金の年金基金への充当や、保険料のポータビリティーに関する規制について、企業と労働組合との協定に主たる役割を認めている。さらに、労使は、退職手当(TFR)の積立金を利用できなくなった企業への埋め合わせ措置および補足的保障制度に関する税法上の取扱いの改善を保障するために、適切な財源を充てる重要性を改めて主張している。また、退職手当(TFR)の積立金の利用に関して選択することになる労働者のために、情報提供のキャンペーンを行う必要性をとくに強調した。

以下は合意文書。

参考:UILホームページ新しいウィンドウ

補足的保障に関する労使の指針

補足的保障制度

委任が、補足的年金形式の増加に加えて、安定的な新規雇用の促進をも目的としていることに鑑みて、労使は、社会保障制度改革に関する委任立法の定める指導原則の実現を、次の2つの要点を優先的に遵守した上で、年金基金の現行秩序(1993年4月21日委任立法124号〔補足的年金形式に関する規制〕)に沿った形で実施すべきと考える。

  • 各種の生産部門により適した補足的年金形式を明らかにし、そのための財政の利用を決定する場合において全国的な団体交渉が中心的な役割を果たすこと。
  • 集団加入型の補足的保障形式と、個人加入型の補足的保障形式とを区別すること。

TFRおよび黙示の合意

労使は、補足的保障制度の発展には、TFRの年金基金への充当が不可欠と考える。したがって、労働者の選択に混乱や不明確さが生じ、その結果、補足的保障制度が崩壊することのないように、この件に関して、明確で一義的な適用法が公布される必要性を主張する。

とりわけ、黙示の授権(黙示の合意)の場合には、TFRの利用は、当然に、団体交渉の自立性が遵守された交渉型の年金方式と、企業と労働者の組合代表との合意を介してあらかじめ決定された方式にしか用いることができない。

年金基金の投資のもつ保障的な性質を考慮し、また、補完的保障(previdenza integrativa)の普及およびリスクの比較的低い労働者側によるTFRの利用をも促進するため、補足的形式による適切な保証の仕組みの始動を進めることが重要である。

委任の中で示された指導基準の中で、ある年金形式から別の形式への保険料の「ポータビリティー」の記述がある。この定めに沿って、ポータビリティーの(制度的または一時的な)範囲および限界の決定は、団体交渉によって実施すべきと考えられる。

いずれにしても、TFRに関する黙示の授権の場合、保険料の納付に拘束力がないことについて明確にしておく必要がある。

団体交渉は、団体型および交渉型の形式(透明性に関して適切な規制をなし、労使との合意で定められた管理基準に沿った運営方式を採用する年金形式を含む)に関しては、当該団体交渉によって創設された年金形式とは異なる形式についても、ポータビリティーの実行を認めることができる。

補足的保障制度の発展にとっての主たる要素としての情報提供

さらに、労働者には、必要な情報提供を受けることが保障されなければならない。こうした情報提供がなければ、黙示の合意という仕組みの意味がなくなってしまい、個人が真に自由で自覚的かつ自立的な選択をなすことができないためである。このため、労使は、黙示の合意の適用に先立った適切な事前措置となるように、委任立法の実施令の採択前に、労使協力の上、年金基金連合が積極的に関わる広報活動を使って、情報提供キャンペーンを行うことが必要だと考える。

実際、労働者の将来を保障しうる年金給付を達成するために、適切な水準の保険料およびTFRの利用によって基礎年金を補完する実効的な保障制度を整備する必要性を、すべての者により明らかにできるのは、適切な情報提供のみである。

INPS(全国社会保障機関)の基金の補完性

INPS(あるいは、その他の強制的保障機関)の元に設置される基金についても、TFRの充当が予定されているが、労使としては、この基金は2次的なものであり、労使が関わる交渉型の補足的保障制度に関する規則に類する運営規則に基づいて設立されるべきと考える。この基金も、1993年委任立法124号が定めるCOVIP(年金基金監視委員会)の監督および監視に服する基金 とされるべきである。

管理および透明性に関する規則

労働者が様々な選択肢の中から自由に選ぶというシステムにおいては、競争の歪曲化の防止と労働者保護のために、関係主体のすべてに共通の規則が適用されるのが基本である。

労働者が補足的保障制度内部で自由に移動できる権利に実効性を付与するためには、生命保険契約を通じて実施される年金形式のように、集団加入型の年金形式と個人加入型の年金形式との間で、管理運営コストの完全な透明性と互換性が確保されている必要がある。とくに、生命保険契約に関する年金形式については、獲得された地位を他の年金形式へ移転することが実際に可能で明快である必要があるとされ、当初の保険料に加えて過度の負担を負わないように配慮されている。

さらに、「管理」原則は、立法者によって委任された他の事項の施行とともに開始され、すべての委任事項同様、他の組織に再度委任することはできないと考えるべきである。年金基金に関する責務の付与について、特別な専門性を有し、独立した主体を利用することは、専門性については、1997年1月14日省令211号4条における職業リストまたは職業名簿に登録する枠組みを、また、独立性に関しては、年金基金を設立した機関との従属労働関係、諮問関係およびそれに類する関係がないという仕組みを使うことによって担保することが可能である。開放型年金基金への集団加入について定められた監督組織の活動は、加入に関する団体交渉において、当該組織の存在および構成について定めを置くことを義務化することによって促進することができる。

補足的保障制度に関する租税規制

補足的年金形式に関する税法上の規制は、とくに以下の点につき、2004年8月23日法律243号〔2004年年金改革法〕の定める委任に含まれる原則に基づいて修正されるべきである。

  • 課税免除可能な上限額の定額形式の定め (5164,65ユーロ)と割合形式の定め(総収入の12%)との間に、より有利な制度を適用し、保険料に関する課税免除制度を見直すこと。
  • EUに存する補足的な保障制度に関する多くの租税制度と同じように、保障目的であるのだから、補足的年金形式の一時金に関する代替税は廃止すること。
  • 租税制度の枠組みを合理化し、実効的な租税助成制度を実現するために、補足的年金給付に対し、累進課税制を考慮した優遇利率制度を適用すること。

さらに、基金、労働者および企業のいずれにとっても簡素な行政手続きを定める必要がある。

企業に対する補償制度

労使は、TFRを提供する企業への埋め合わせ措置に関する原則は、補足的保障制度に関する他の原則や指針基準の適用と同時に適用・実施されるべきと考える。

この措置は、次のような方法で実施されるべきである。

  • とくに中小企業に対する貸付を容易にすること。
  • 企業のために社会保険料負担を租税化するなどして、同程度の労働コスト縮減を実施すること。
  • TFRの保障基金の財政に充てる社会保険料を見直すこと。

以上はすべて、予算において、速やかに必要な財政措置をとることを要する。

プロジェクト労働および供給契約

2004年法律243号は、プロジェクト契約および供給契約を締結した労働者のカテゴリーについて、具体的な措置を規定していない。INPSのデータによると、こうした労働者のカテゴリーについては、所得代替率が低いことに起因する問題が明らかになっており、公的制度の負担する扶助的性質の補完的措置が必要と考えられている。

補足的保障制度に関する現行法の仕組みは、保障目的にふさわしい支柱を構築するために、適切な財政の利用と労働活動に関し最低限保証される期間を定めることを要求しているが、上記の労働関係に関しては、その複雑さのために、補足的保障制度を利用した場合、どのようなことが起こるかを予想することが困難になっている。

CGIL、CISL、UILおよびUGLの意見では、TFRまたはそれに類する手当を利用できないか、これらが不十分なのだから、具体的な措置が可及的速やかに実施されるべきである。

それゆえ、上記の労働関係に関する補足的保障制度の需要に効果的に答えられるような、具体的な法的支援措置を定めることが必要である。

このために、政府と最も代表的かつ当該問題に利害関係を有する労使との間で、問題の具体的な掘り下げを行うことが必要と考えられる。

独立労働(自営業者)

ConfcommercioおよびConfartigianatoは、強制的年金の算定方法たる拠出方式(納付した社会保険料に基づき、給付を算定する方式)の実施が、これらの労働者に関する公的給付の劇的な引き下げを伴うことを考慮して、独立労働者に関する補足的保障制度の発展を促進するために、委任により具体的な支援措置を適宜定めることが不可欠と考える。

集団加入型年金形式および個人加入型年金形式の監視および監督

労使は、委任された他の措置の実施を呼びかけるとともに、補足的保障制度全体をCOVIPの監督下に置くために具体的な措置をとるよう、労働社会政策省に対し強く働きかける。

(開放型基金への加入または保障目的の生命保険契約の締結によって実施される)個人加入型のものを含め、補足的年金形式はすべて、TFRの積立金を取得するには、COVIPによる具体的な許可を得なければならない。

TFRの移転が、集団加入型年金形式と個人加入型年金形式とで、コストの均衡性が保たれ、同じような透明性の基準に従い実施されるようにするには、TFR取得および他の年金基金の下で獲得された地位の移転に関する規則が、黙示の合意が適用される前に決定されなければならない。

さらに、COVIPは、労使の提案および評価をも考慮しつつ、労働社会政策省の定める一般指針に基づいて、開放型基金に集団加入する場合に、当該開放型基金で実施されるべき管理モデルを示さなければならないだろう。

COVIPが、新たに与えられた任務を効果的に遂行し、十分にその機能を果たせるように、適切な財政手段(ならびに集団加入型および個人加入型の官民の補足的保障制度の共同参加)を定めなければならない。

最後に、保険的な形式に移転されるTFRの充当に関する保証措置を確保するため、TFRの充当がなされた場合について、保険会社により管理される財源、または、保険会社自身の保障基金により設けられる財源の財産上の独立性と自立性に関する規制を、適切な法的措置により強化することが不可欠である。

公務員に関する補足的保障制度

CGIL、CISL、UILおよびUGLは、すべての公務員に関して、制度が設けられていない部門に年金基金を設置することで、補足的保障制度を整備する必要性があることを主張する。

公的労働者は、90年代の改革の対象であったのだから、これは先送りできない問題である。

解決すべき主たる課題は、公務の特殊性を考慮して、TFR実現の可能性および黙示の合意の適用方法である。このため、早急に、政府、ARAN(公務交渉代表機関)および労働組合との交渉の場を設ける必要がある。

関連情報