対応迫られる出稼ぎ移民の問題
国内で職を得ることが難しいなか、多くのインドネシア人にとって国外への出稼ぎは収入確保の手段となっている。政府による合法的な送り出しが進められる一方、非合法的な移民送り出しを行うあっせん業者も存在しており、不法移民は後を絶たない。移民への暴力や人権侵害などの案件もしばしば報道されている。合法、非合法も含めた移民労働者の保護を求める声が、インドネシア国内で高まっている。
移民から送られる収入額を次表でみると、9カ月間で延べ1億7000USドルに及んでいる。出稼ぎ先の国としては中東・アフリカ地域が圧倒的に多い。ただしこれは政府の公式統計であるため不法移民については含まれていない。不法移民も含めると、収入額はこれよりずっと多いと考えられる。
地域 | 移民労働者数 | 外貨 (US $) |
---|---|---|
Asia pacific | 67,817 | 60,263,238 |
Middle East & Africa | 176,788 | 110,362,494 |
America | 16 | 119,724 |
Europe | 3 | 123,831 |
合計 | 244,624 | 170,869,287 |
資料:インドネシア労働サービス事務所
2004年1~9月のデータ
アジア・太平洋地域の国のうち、合法・非合法とも移民数が圧倒的に多いのはマレーシアである。マレーシア政府は不法移民労働者(その大半がインドネシア人)の本国への強制送還を進めており、今年の2月を不法移民の自主的出国期限としていた。しかしその2月、不法移民を追跡中の警備員が4人のインドネシア人移民を射殺するという事件が起きた。制度的な保護を受けられない移民問題の一端が浮き彫りにされた。
インドネシア政府は現在、移民の保護を目的とするレーバー・アタッシェの駐在計画を進めている。すでに駐在事務所があるサウジアラビア、マレーシアに加え、新たに6か国(アラブ首長国連邦、シンガポール、香港、韓国、クェート、台湾)が対象となっている。
しかし、これのみで移民問題を解決することはできない。国内ではより抜本的な対策を求める声があがっている。例えば移民を不法にあっせんする業者が存在しているにもかかわらず、それらの取り締まりはなされていないという。合法的な移民手続きは複雑でかつ費用が高いとの指摘もある。国内の雇用創出がなければ抜本的解決にはならないとの声もある。政府は大きな課題に直面している。
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