欧州委員会、成長と雇用のための統合ガイドラインを発表

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  • 国別労働トピック:2005年5月

2005年3月に開催された欧州理事会(EU首脳会議)は、リスボン戦略の再活性化に向けた欧州委員会の「成長と雇用のためのパートナーシップ」と題する新戦略を採択した。これを受けて、欧州委員会は、4月12日、欧州の成長と雇用を促進するための新3カ年計画(2005~2008年)となる「統合ガイドライン」を発表した。新統合ガイドラインは、欧州の脆弱な経済実績と低調な雇用創出状況を是正するためのマクロ経済、ミクロ経済、雇用の3分野に関する包括的な戦略を盛り込んでいる。また、ガイドライン数を削減し、成長と雇用創出の核となる政策に重点を絞り込んだより簡素化されたガイドラインとなっている。このガイドラインに基づき、加盟国は2005年秋までに「国別改革計画」を策定する。

統合ガイドライン・パッケージは、リスボン戦略の中間見直しにおいて確認された同戦略を再活性化するための3つの優先行動目標――1)投資と仕事のために欧州をより魅力的な場所とすること、2)成長のための知識と技術革新、3)より多くの良質な仕事の創造――に基づき、マクロ経済、ミクロ経済、雇用の3分野ごとに、優先課題に関するガイドラインを設定している。

EUの失業率は、2006年には8.7%に低下すると予想されるが、改善速度は遅々としている。2003年のEU25カ国の就業率は62.9%であり、2010年の到達目標である70%を大きく下回っている。女性の就業率は56.1%であり、目標の60%に向けた進展が多少見られる。高齢者の就業率は40.2%に留まっており、2010年目標の50%の達成が最も危ぶまれている。仕事の質の改善状況は複雑であり、経済の停滞が社会的結束の必要性を浮き彫りにしている。長期失業は、7年間減少し続けた後、再び上昇に転じ、今後数年間は減少する兆しが見られない。

加盟国がこれらの問題に対処するための雇用政策指針となる欧州委員会の新雇用ガイドライン(2005~2008年)は、欧州雇用戦略の全体目標であるフル就業、仕事の質と生産性の改善、社会・地域統合の強化を反映している。新雇用ガイドラインは、リスボン戦略の中間見直しにおいて提起された雇用に関する3つ優先課題、1)より多くの人々を雇用しそれを維持すること及び社会保護制度の近代化に向けた雇用政策の実施、2)労働者と企業の適応能力の改善と労働市場の柔軟化、3)より良い教育と技能開発を通じた人的資源投資の拡大――に基づき設定された。

新雇用ガイドラインは、すべての年齢階層が直面する問題に対処するため、1)フル就業、仕事の質と生産性の改善、社会・地域統合の強化に向けた雇用政策の実施、2)生涯を通じた仕事へのアプローチの促進、3)求職者、障害者のための包括的労働市場の整備、4)労働市場の必要に応じたマッチング機能の強化、5)雇用保障を伴う柔軟性の促進と労働市場分割化の是正、6)雇用フレンドリーな賃金・労働費用制度の導入、7)人的資源投資の拡大と改善、8)新たな能力開発の必要性に対応した教育訓練制度の導入――の8つのガイドラインを設定している。

リスボン戦略のガバナンス過程が余りにも複雑すぎたという反省に立ち、新統合ガイドラインは、従来別個にあった経済政策と雇用を統合した単一のガイドラインに基づく簡素化された新たなガバナンス・サイクルを採用した。加盟国は統合ガイドラインに基づき、3カ年の国別改革計画を策定し、毎年秋に改革計画の進捗状況に関する単一の国別報告を提出する。欧州委員会は、各国報告を取りまとめて分析した、EUの進捗状況報告書を毎年1月に発表するとともに、必要に応じて、統合ガイドラインの修正を勧告する。

出所

  • 欧州委員会ホームページ

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