弾力的労働時間制度とパートタイム労働の現状

カテゴリー:非正規雇用多様な働き方

台湾の記事一覧

  • 国別労働トピック:2005年4月

弾力的労働時間制度の導入状況

台湾では週5日労働制が一般的になっているが、労働者の正規の労働時間は、現行労働基準法によって、1日8時間、2週当たりで84時間を超えてはならないと規定されており、正規の労働日数は平均5.5日以下となっている。

行政院労工委員会(CLA)が最近実施した調査によれば、週5日労働制を導入していると回答した企業が約38.2%あり、その比率は年々増加する傾向にある。一方、現行労働基準法は、必要な場合、企業に対して1日当たり最大で4時間の労働時間延長を認めているが、労働時間を延長したと回答した企業は13.8%であった。そのうち、60%と最も高い比率を占める業種は金融業、保険業及び電気・ガス・水道事業であった。

また、5.2%の企業では中央省庁の認可企業を対象に、労働時間を週2時間、週4時間、週8時間の中から選択できるモデルの導入を認める現行労働基準法に基づき、弾力的な労働時間制の導入に取り組んだと回答している。

弾力的労働時間制を導入している企業の比率は5.9%である。職種別に見ると、接客業従事者、商店従業員、スーパーマーケット従業員が中心となっている(36.6%)。すなわち、知識集約型経済への移行と近年実施された台湾産業構造の転換に伴い、現行労働基準法の範囲内で、各産業における労働時間の弾力性が高まっていることを物語っている。

パートタイム労働の現状

台湾において、もう一つの注目すべき労働時間に関する動向は、パートタイム労働者の数が着実に増加していることである。CLAが実施した人的資源活用調査に関する報告によれば、米国、日本、EU諸国など他の国々と比較すると、まだ大幅に低い状況にあるとはいえ、1988年に5.4%だったパートタイム労働者の比率は、2003年には7.0%まで増加した。そのうち、パートタイム労働者の比率が最も高い飲食店業に従事する労働者の8.26%は、パートタイム労働者として雇用されている。運輸、情報記憶・通信、公共・民間サービスの各業種におけるパートタイム労働者の比率はそれぞれ7.42%、5.87%、2.66%となっている。全体として、サービス産業部門における全労働者に対するパートタイム労働者の比率は5.93%となっているが、製造産業部門におけるパートタイム労働者の比率は1.11%に過ぎない。製造産業部門におけるパートタイム労働者の比率が低い理由については、パートタイム労働の定義、雇用主・被雇用者双方の意識の相違のみならず、労働法規の解釈にも関係するものと思われる。台湾では、労働基準法に従って、「正規労働時間」は2週当たり84時間と定められている。現在、パートタイム労働者に該当するのは、労働時間が週35時間未満の労働者であることから、パートタイム労働者の数は66万人で、2003年における就労人口の7.0%となっている。

同調査によれば、雇用主がパートタイム労働者を採用しない主な理由として、すでに雇用しているフルタイム労働者だけで十分に業務を遂行できること(83%)、業種的にパートタイム労働に適していないこと(20.93%)、パートタイム労働者の退職率が極めて高いこと(8.3%)、パートタイム労働者の訓練が別途必要になることなどが挙げられている。

被雇用者側の意識は、パートタイム労働を希望する主な理由として、「個人的な予定が立てやすく(32.09%)、学生として臨時収入が得られる(18.22%)」、「パートタイム労働で得た収入だけで生計費を賄うことができる(10.24%)」、「子供の世話に費やせる時間が多くなる(9.85%)」、「仕事以外の趣味に時間を費やせる(4.8%)」などが挙げられている。パートタイム労働は全体として、老若を問わず、台湾において最も一般的なものであるといえる。年配者の場合、フルタイム労働に従事できるほどの活力は残っていないと感じ、若者の場合、就学しながらパートタイム労働で収入を得たいと考えているものと思われる。更に、同調査によれば、学歴が低い人ほど、パートタイム労働に従事する率が高いという結果も出ている。

最終的に、パートタイム労働者は通常、労働時間、賃金、特別休暇などを含む、労働基準法の保護を受けている。特に、CLAは長年に渡って、労働基準法に基づくパートタイム労働に関するパンフレットを作成し、パートタイム労働者に配布してきた。しかし、パートタイム労働は勤続年数が短いということで、現行労働基準法に基づき、雇用主から退職金を受給することが難しい状況にある。現行労働基準法によれば、退職金の受給について、15年以上勤務し満55歳に達した労働者の場合や25年以上勤務した労働者の場合を含む、労働者が希望退職を申請する場合の前提条件を定めているからである。その規定は性質上、可能な限り、フルタイム労働に従事することを奨励している。しかし、これまでの確定給付年金と同一企業内勤続年数制度に代えて、確定拠出年金と移動継続勤続年数制度を導入した労働者退職年金法が成立し、同法が発効する2005年7月1日から、そのような問題は解消されるはずである。

知識集約型経済への移行においては、労働時間の弾力性を高め、パートタイム労働者の増加を促すことが求められる。従って、政府と雇用主にとって新たな人的資源開発・管理制度を確立することが現時点での重要な課題となっている。

2005年4月 台湾の記事一覧

関連情報