悪化する雇用情勢
―法人税率引き下げなど追加策発表

カテゴリー:雇用・失業問題高齢者雇用統計

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  • 国別労働トピック:2005年4月

1月に失業者500万人台に達し、翌月にかけてさらに悪化したドイツの雇用情勢。連邦政府はこれを受けて対応策を検討し、3月17日、法人税率引き下げを柱とする景気対策を打ち出した。同日には、シュレーダー首相が最大野党トップと会談し、この対応策について大筋で合意。しかし、財政赤字問題を抱える連邦政府にとって財政出動の余地が限られていることなどから、その効果は限定的との指摘も出ている。

ドイツの2月の失業率は521万6000人と、前月よりさらに17万7000人増加。失業率も、12.6%と、前月比0.5%上昇している。1月からのハルツ第Ⅳ法施行により、昨年12月まで生活保護手当を意味する「社会扶助」給付を受けていた人の一部が新たに失業者として登録されたことが主な原因だ。これに加え建設業などで冬に雇用が減少する季節要因が、さらに失業者数を押し上げている。

景気回復の足取りが重いことも事態を深刻にしている。04年の実質経済成長率は年間では1.6%だったが、第3四半期から第4四半期にかけてスピードが鈍化。05年の成長率見通しについても、五賢人委員会(ドイツの有力研究所で構成する連邦政府の経済諮問委員会)が当初1.4%としていたのを1%程度にまで下げるなど、悲観的な見方が強い。

このような情勢に対し、連邦政府が3月17日に発表した景気対策では、法人税率について、国税分を現行の25%から19%へと6ポイント引き下げるとした。また、投資額が4年間で20億ユーロに達する交通インフラの整備も実施される。労働市場に関する政策としては、高齢の長期失業者対象の2億5000万ユーロ規模の雇用促進プログラムや、期限を定めた雇用に関する規制(有期の雇用契約を繰り返し結ぶことに対する制限)の緩和などが盛り込まれている。

しかし、今回の減税などによる景気浮揚効果は、限定的であると見られている。財政赤字を増やすことができないため、法人税率の引き下げの財源を、他の課税強化などにより捻出しなければならないからだ。17日に行われた、シュレーダー首相(SPD=社会民主党)とCDU(キリスト教民主同盟)のメルケル党首およびCSU(キリスト教社会同盟)のシュトイバー党首による三者会談では、今回の景気対策に大筋で合意した。しかし経済団体、労組、経済研究所などからは、対策の個々のメニューについて批判も出されている。今回取り上げられなかった政策の検討も含め、国内での論議が続いている。

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