デンマーク労働総同盟(LO)が雇用移転に対抗する10の戦略を発表

カテゴリー:雇用・失業問題人材育成・職業能力開発

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2005年1月、デンマーク労働総同盟(LO)は、デンマークにおけるグローバル化の影響に対抗し、他国への雇用流出を防止するための10の戦略を発表した。その中心的な課題は教育訓練である。グローバル化は、2月8日に行われたデンマークの総選挙の重要な争点の一つとなった。総選挙は自由党・保守党連立政権が勝利した。

2005年1月18日、自由党と保守党による連立政権を率いるラスムセン首相は、2月8日の議会選挙実施を公示した。選挙運動初日の1月19日、Danish Crown社は、北部ユトランドのヨーリン(Hjorring)にある食肉工場の閉鎖を発表した。生産の一部はドイツとデンマークのホーセンス(Horsens)に移転され、ヨーリンで働いていた450人が解雇される。デンマークにおいては、伝統的に失業対策と雇用創出が総選挙の争点となってきた。今回この問題に、グローバル化の影響によるDanish Crown社のような状況においていかに雇用を守っていくかという新たな視点が加えられた。多くの政治家がヨーリンを訪れた。

労働組合は、伝統的に使用者よりも選挙運動に介入してきたが、2005年も例外ではなかった。選挙運動が始まって1週間後、LOはグローバル化に対抗するため10の戦略を発表した。この文書は、1月25日、オーデンセ(Odense)においてLOが主催した会議で提案された。会議には社会民主党の政治家や保守党の経済産業大臣などが出席していた。

LOが提案した10の戦略は、次のとおりである。

  1. 労働者に対し5年ごとに再教育訓練を受ける権利を付与すること。
  2. 閉鎖の危機にある企業や解雇される従業員に対する支援措置を講ずること。
  3. 特に不均衡な状況にある地域において投資と成長を促進させるための地域開発基金の活用。
  4. より多くの労働者が教育を受けられるよう、成人の技能実習生の雇用に対する障壁を除去すること。
  5. すべての失業者に情報技術教育を受ける権利を保証すること。
  6. 新しい仕事に就くための再訓練においてガイダンスやカウンセリングを受ける権利を保証すること。
  7. 失業者の再訓練のためにより良い機会を提供すること(訓練期間を6週間に制限している現行規定の廃止)。
  8. 労働者が教育訓練を受け、その代替要員として失業者を臨時的に雇用するための配置転換措置を講ずること。
  9. 中小企業の開発を促進するための地域開発センターの創設。
  10. 解雇される労働者に対しより良い教育訓練機会を提供するために、より長期の解雇予告期間を設けること。

肝要な点は、教育訓練であり、グローバル化に対する労働市場の挑戦に関する最近の政治論義の中心をなしてきた。2004年には、1月平均1社以上の企業が、100人以上の労働者を有するデンマークの拠点を、欧州域外のより低い賃金の国や東欧諸国などのEU域内の国に移転させた。雇用の移転やオフショアリングは、現在デンマークで非常に深刻な問題として捉えられている。政治家もソーシャル・パートナーも雇用と生産を維持する手段として、教育コンピテンスの活用を指摘している。

出所

  • 欧州労使関係観測所オンライン (EIRO)

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