中道・右派連立政権が新政策プログラムを発表

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  • 国別労働トピック:2005年4月

2月8日、デンマークでは総選挙が行われ、与党の中道・右派勢力が過半数を上回る議席を獲得し、自由党のラスムセンを首相とする連立政権の続投が決まった。今回の選挙では福祉政策、税制、移民・難民政策などが主な争点となったが、自由党と保守党などから成る中道・右派連立政権は、組閣と同時に向こう4年間の政策プログラム「新たな目標」を発表した。

労働政策分野においては「更なる雇用創出」をスローガンに、1)移民のより積極的な労働市場参入を推進し、2010年を目処に2万5000件の新たな雇用を創出、2)同一労働・同一賃金の原則をより徹底的に浸透させる一手段として、既に公的部門において導入されている「男女別賃金統計データ」の作成を義務化――などの労働政策プログラムを発表した。このほかプログラムには、高齢者の職場参加を促進し、2010年を目処に7500件の雇用を創出すること、失業保険基金の自由選択(注1)などが盛り込まれている。

(1)移民の積極的な雇用

デンマークの失業率は、対労働力人口比で5.6%(2005年1月現在)と他のEU諸国に比べ比較的低い水準を保っている。一方、移民一世及び二世の失業率は対移民労働力人口比で10.4%(同)と極めて高いことから、これら移民の雇用確保が近年大きな課題とされてきた。

このような状況の中、国と国家公務員組合連合(CFU)(注2)は2月24日、移民の積極的雇用を目的とする「スタート賃金(Startlon)」制度の導入に合意した。同制度は、通常の初任給の80%の賃金で国の各種機関が移民をフルタイム雇用(週37時間)する制度。ただし、同制度適用の対象となるのは、デンマーク語の語学力が不足しており、職業専門教育あるいは専門教育を受けていない移民一世及び二世である。当該雇用者には週37時間のうち20%(7.4時間)を利用し、スキルアップのための訓練、研修、卒業後教育等のコースに1年間参加することが義務づけられる。さらに就業後1年が経過した時点で雇用者の能力・技能が評価され、労働協約に基づく通常の雇用条件適用の是非が判断される。

(2)男女別賃金統計データ作成の義務化

2002年、KTO(注3)と地方自治体連合が締結した労働協約には、同一労働・同一賃金の原則を徹底させるために、地方自治体職員の男女別賃金統計データの作成に関する条項が盛り込まれている。しかし、同協約は公的部門に限ってのみ適用されるため、政府は民間部門における男女間賃金格差を是正するツールとして、従業員35人以上の企業に対して、男女別賃金データ作成を義務化する意向を示した。

2004年11月に公表された公的部門職員の賃金統計によると、アムト(県)及びコムーネ(市)の女性職員は合わせて45万3080人で、平均給与は月2万5238クローネ(注4)。一方、男性職員は13万8563人で、平均給与は月2万9266クローネとなっている。男女別賃金統計の他、地方自治体では、職種別男女職員の割合に関する統計資料も作成している。

男女別賃金統計作成の是非は長年にわたって国会で討議されてきたが、1976年には男女賃金平等法が施行されたにも関わらず、依然として男女の賃金に格差が見られるため、同法の目的である同一労働・同一賃金の原則を末端まで徹底させることを目指し、政府は民間部門においても男女別賃金統計データ作成の義務化を宣言した。

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