熟練労働者不足問題
溶接工、自動車電気工、自動車工、美容師といった専門職人材の不足が続いている。特に鉱業部門における技術者不足は深刻で、ヤンディクージナ鉄鉱山などの大型プロジェクトに遅れが生じるなど経済成長の阻害要因となっている。2004年の失業率は史上最低の5.1%と安定しており、雇用の伸びも堅調であるものの、豪連邦準備銀(RBA)は熟練労働者不足による賃金インフレを懸念、2005年3月には、1年3カ月ぶりの政策金利の引き上げを行なった。
賃金交渉における組合および労働者の立場有利に
一方、組合や熟練労働者の立場は非常に有利となっている。自動車部門では、自動車産業組合連合(FVIU)がトヨタに対して年間10%の賃金引上げおよび雇用者による退職年金への拠出を15%拡大するよう要求したほか、オーストラリア労働者組合評議会(ACTU)も鉱業関連大手エッソ、ワンスティールおよびアルコア社に対する賃金交渉において4~5%の賃金引上げを求めるなど強気の賃金交渉が行われている。
建設林業鉱山エネルギー労働組合(CFMEU)書記長は、交渉の際に企業が「労働力の確保のためにはどんな条件でも合意する」と言うほどまでに熟練労働者不足が深刻化しているとコメントした。実際にゼネラル・モーターズ・ホールデン社は4年間の労働契約および退職年金への雇用者拠出額の増大に同意したほか、クィーンズランド州の電機セクターの労働者は雇用企業から向こう3年間で27%の賃金引上げへの同意を取り付けている。
政策対応
移民省は特に不足している医師や機械工、美容師、薬剤師、会計士などの専門職を中心に2005/06年度の熟練労働者の移民受け入れ枠を現行より2万人以上多い約10万人に増やす意向だ。しかし経済のグローバル化により、各国間で熟練労働者の争奪戦になることが予想されることから、ACTUは人材不足を移民によって解消するのではなく、国内労働者の職業教育訓練(VET)の拡充に力を入れるべきだと主張している。
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