社会対話路線の再開
サパテロ首相は、2005年2月3日、労働者総同盟(UGT)のメンデス書記長、労働者委員会(CC.OO.)のフィダルゴ書記長、スペイン経団連のクエバス会長を、官邸のモンクロア宮に迎え、2時間にわたって会談した。職業間最低賃金(SMI)の改定問題をめぐって破綻しかけた社会対話路線(注1)は、この会談をもって再開したものとみられる。
会談では、労働市場改革、年金制度の将来、介護法案――をめぐる合意達成を春までに目指すことで一致。サパテロ首相は、毎年春に開催される欧州理事会の前に、労使双方と必ず会合することを約束した。
労働市場改革について、「雇用の質の向上と安定」を目指す政府は、有期雇用の制限(注2)が最大の目的であるとしている。本会合に先立ち、政府はすでに専門家による答申案を入手し、非公式ながら労使双方に提示するなどして、準備を進めている。「雇用者側にとって期限の定めの無い雇用をより魅力的なものにし、他方で有期雇用の魅力を削減する」というのが、政府の考えである。
政労使とも本会談について、前向きに評価しているものの、SMI改定をめぐる意見の相違は残されたままである。現政権は2008年までにSMIを月額600ユーロまで引き上げるとしており、この間はインフレ率との関係を無視してSMI額の引き上げが行われる。そのため、SMIの改定に「見直し条項」(インフレ率が予測を上回った場合、あわせて賃金上昇率を見直すとした条項)を適用するか否か、またこれを労働者憲章におけるSMI関連条項(第127条)改正に反映させるかは、2008年までに決定することとし、その間、時間をかけて検討を続けることになった。
この会談とほぼ同時に、労使間でも2005年の集団交渉の大筋を設定する基本合意(ANC)に向けた交渉が再開されている。政府はANC交渉の決着を待って、労使双方と労働市場改革をめぐる協議を本格的に始めたいとしている。
注
- SMIの改定をめぐっては、2004年末に、社会対話の枠組みで合意がなされたにもかかわらず、ソルベス大臣が閣議で承認されることに反対の意を示していたことが明らかになり、社会対話の危機と危惧されていた。
- スペインの有期雇用率は30%を越え、EUでも最高のレベルに達している。
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