英国大規模3労組、合併に向けて協議を開始

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  • 国別労働トピック:2005年3月

2005年2月、英国の3つの大規模労組は、欧州最大規模の労組であるドイツのIGメタル(組合員数約252万)に匹敵する「スーパー労組」の創設を模索するための合併予備協議を開始した。合併の実現で誕生する「スーパー労組」は、産業のみならず政治的にも大きな影響力を持つことになる。

今回の協議に参加したのは、民間部門のアミカス、輸送一般労組(T&G)、全国都市一般労組(GMB)。加入する組合員は製造業、金融サービス業、エネルギー、公共部門の広範囲にわたり、その数は重複加入者を含めて約260万人。合併が実現すれば、自動車産業、大手銀行、航空宇宙産業、石油ガス事業に従事する労働者全体を代表する存在となり、英国最大労組である公務部門労組(UNISON:組合員数約129万)を凌ぐ規模となる。

合併案について、T&Gのトニー・ウッドリー書記長は、「合併協議は労組が産業政策に関する重要な課題を捕らえる上で歴史的な好機になる。協議に参加した労組は強力な単一労組として、無益な競争を回避し組合員のために闘うことを活動の中心に据えることができるはずである」とその効果を述べている。また予算と人員を統合することで経費の節約も可能になる。合併労組の年間収入は2億ポンド、組合員募集資金は2,000万ポンドに達する見込み。「スーパー労組」の誕生は多国籍企業に対抗するための大規模国際労組の創設に向けたスタートに過ぎないと考える労組役員もいる。アミカスのデレク・シンプソン書記長は、欧州全体を対象とした単一労組の創設を構想し、IGメタルと提携関係を築く可能性も指摘している。

しかし、合併による悪影響もある。懸念は、「スーパー労組」の誕生が労働党政権に与える影響があまりにも大きいことである。同党の大半を占める300人の議員が「スーパー労組」出身の議員となり、関係3労組から資金援助を受けている。現在でも合併予定の3労組は労働党にとって最大の支援団体。「スーパー労組」が労働党にとって最大の資金源になることは疑いない。「スーパー労組」と同じ部門で活動する小規模労組や新規労組が締め出されるという懸念もある。「スーパー労組」が産業に与える影響力に対抗できなくなるとの理由だ。

単に規模が大きいというだけでは、新たなスーパー労組が必ずしも成功を収めるとは限らないと指摘する業界関係者もいる。1970年代末のT&Gの組合員数は約200万人に達していたがその後減少の一途をたどり、今では100万人を下回っている。欧州最大規模の労組と称されるIGメタルも組合員減少の問題を抱えている。英国で組合員数の減少が続く状況に歯止めをかけ、「スーパー労組」が成功を収めるためには、交渉の中心を単なる賃上げ要求ではなく年金といった問題の解決を活動の中心に据えなければならないだろう。

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