外国人労働者受入れ凍結政策

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2005年2月

現在、台湾では、ベトナムとインドネシアからの外国人労働者の失踪が多く問題となっている背景には送り出し国側の制度の問題もある。長年にわたり、失踪外国人を出してきたインドネシアからの外国人労働者の受け入れを凍結する政策をとっていることは、2004年12月のこの欄で紹介しているが、労工委員会(CLA)は、2004年12月19日の記者会見で、台湾はこの凍結政策を解除し、2年4カ月に及んだ受入れ凍結を終了させる予定であると発表した。

インドネシアへの受け入れ凍結政策の解除

インドネシア政府が、インドネシアから台湾に渡った失踪労働者の状況と職を求めて台湾に移住したインドネシア人労働者を対象とした人材仲介業に関する問題の改善に向けて、誠心誠意努力すると表明したことで、台湾政府は、インドネシアからのブルーカラー労働者の受入れを再開することを決定した。

台湾は長年に渡り、失踪労働者を送り出している国の労働者管理の問題点は、不当に高い人材仲介手数料で、これが高い失踪率の最も重要な原因であると判断してきた。外国人労働者受入れ凍結政策は、失踪外国人労働者の管理上の問題解決は受入れ国の義務であるばかりでなく、送り出している国の責任でもあるとのCLAの考え方によるものである。そのような管理上の問題が深刻化しているのは、外国人労働者を送り出している国の怠慢に原因があると考えられていることも、CLAが受入れ凍結政策を導入するに至った主な理由となっている。

受入れ凍結政策に基づき、CLAは2002年8月1日からインドネシア人労働者と介護労働者の受入れを中止していた。その理由は、インドネシア人労働者の高い失踪率を含む、複数の要因が存在すること、インドネシアの人材仲介業者が台湾の同業者に対し、インドネシア人労働者に「保証」金を与えないよう強要していること、インドネシアが台湾の要求した仲介手数料の引下げを実行しなかったことによる。受入れ凍結政策の実施によって、主に介護労働者として台湾で働くインドネシア人労働者は、2002年には9万人以上在留していたが、現在では3万人に減少している。

受入れ凍結政策を解除するため、インドネシアと台湾の各代表者は両国間の国際労働協力に関する覚書に署名した。同覚書の目的は、台湾で働くインドネシア人労働者の権利、労使紛争を解決する手段、インドネシア人に対する医療サービスと受診費用、人材仲介業者に対する徹底した監視、「直接雇用」手段の早期確立などを含む、台湾で就労しているインドネシア人労働者に関する問題に対処することにある。

同覚書は、2004年10月20日に就任し、直接選挙実施後初の大統領となったユドヨノ大統領によるインドネシア新政府が誕生して以来、両国間で初めて取り交わされた公式文書である。両国間の国際労働協力に関する意見交換を続けるために、両国は同覚書に従って、第1回台湾・インドネシア労働会議を2005年1月2日に台湾で開催することについても合意した。

ベトナムへの台湾政府の対応

CLAがインドネシアからの労働者の受入れを凍結して以降、ベトナム人労働者が台湾で最も失踪率の高い国となったため、ベトナム・台湾両政府間で、実行可能な問題解決策に関する協議を実施することが優先課題になっている。CLAは、ベトナムからの失踪労働者の数が増え続ける場合、インドネシア人失踪労働者に対する措置と同様、ベトナム人労働者の受入れを拒否せざるを得ないとしている。それに伴い、台湾にあるベトナム経済文化代表部(VECO)は11月下旬、台湾がベトナム人労働者の受入れ凍結政策を解除する条件としてCLAが定めた最終期限を順守するために、2004年末までに約2000人のベトナム人失踪労働者を検挙することを約束した。ベトナムのグエン・ルオン・トラオ労働・傷病兵・社会問題省副大臣が10月に台湾を訪れ、CLAに対し、時宜を得た方法で失踪労働者問題を解決することを約束した後、VECOは失踪労働者を検挙する動きを加速させている。しかし、CLAは、その約束が期限までに果たされず、失踪労働者に関する問題の改善が予定通り進まない場合、それに応じた措置を講じる可能性がある旨を表明した。

上述の約束が果たされたか否かについてはまだ発表されていないが、台湾の政策当局は一斉検挙措置を講じ、VECO職員の協力を得て10月~11月期に約500人の失踪労働者を検挙した。

また、2004年末までに失踪労働者を検挙しなければ、ベトナム人労働者の受入れを凍結するとの台湾当局からの強い圧力を受けて、ベトナム当局は約100の人材仲介業者に対し、台湾にまだ在留していると思われるベトナム人失踪労働者の捜索を行うよう命じている。

ベトナムの人材仲介業者が、地方当局による失踪労働者捜索の一助となり得る理由は、失踪労働者のベトナムに住む親族の住所や電話番号を含む、失踪労働者に関する詳細な情報を記録保管しているからである。VECO職員によると、ベトナム人労働者の多くがその情報を利用して、捜索に必要な資金を定期的に送金しているからであるという。CLAの記録によると、現在台湾に在留している約8万4000人のベトナム人労働者のうち1万1000人が10月末現在で失踪しており、台湾における失踪外国人労働者のほぼ半数は、ベトナム人労働者ということになる。CLAは、失踪外国人問題の最も重要で唯一効果的な方法は、ベトナム人労働者に対する受入れ凍結政策ということで導入準備を進める姿勢を示している。

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