民営化・合併計画の断行に国有企業労働組合等が抗議

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年2月

グローバリゼーションと知識集約型経済の急速な移行により、台湾は、国際競争の厳しい局面に直面している。台湾政府は、国際競争力確保を目的として国内構造改革を断行するため、国有企業の合併・民営化、金融部門の合併等を重点政策として掲げている。一方、これに対し、権益の維持と保護を主張する国内の労働者、関係者たちは抗議行動を展開している。

公社等国有・関連企業での労働争議

政府のこの政策による労働者の権利への悪影響や労働者の不安の増大を理由として、立法院(国会)の開催に先立ち、台湾石油公社、台湾郵便公社、台湾水道公社、台湾煙草酒専売公社、中華電信公社を含む国営企業に関連した労働組合は、政府の国営企業民営化計画に対する非難を強めるために臨時大会を開催した。組合加入労働者と組合役員の大半を占める約3000人が参加した。

国営企業に関連する地方組合と台湾労働組合連合会の代表者とともに、大会に参加した労働者は立法院議員に対し、政府の国営企業民営化計画を棚上げにするとともに、1)政府は、民営化を進める前に労働組合との団体交渉に臨み、合意書に署名すること、2)民営化計画に関する合意が成立しない限り、政府は民営化を強行しないこと、3)政府は、国営企業の経営管理に干渉しないこと――の3つの要求を受入れるよう求めた。

その要求に対し、与党民主進歩党(DPP)の立法院幹部会議が回答を示さなかったことを受け、労働組合代表と組合員は、立法院の外でハンガーストライキを開始した。

地元紙によれば、DPP幹部会議が労働組合側の要求に応じることを拒否した理由は、その要求を受入れれば、政府は、毎月の年金支払と他の金融助成金計画に必要な資金を含む、1000億新台湾元もの資金を追加拠出せざるを得なくなるからだという。

しかし労働組合代表は、3つの要求はすべて、陳水扁総統が総統選挙戦中、選挙当日直前の2004年3月18日に公約したものであり、組合統轄団体が行政院(内閣)に対し、陳総統がまだ実行されていない選挙公約を果たすよう求めていたものだとしている。今回の大会に参加した労働者は、選挙公約に反するとして与党民主進歩党を非難すべく、「名誉と信頼」と漢字で描かれた横断幕と旗を掲げてデモ行進を続けた。労働組合代表は、1月に今立法院議会が閉幕するまで、ハンガーストライキを続けることを表明している。

金融部門の国際競争政策と国営銀行の抗議行動

また、全国銀行従業員組合連合会の100人を超える代表は、財政部管轄の金融監督委員会(FSC)が発表した銀行合併を促進するという政府改革案に対して、ここ2カ月で2度の抗議行動を展開している。同連合会の代表らは、台湾銀行、台湾合作金庫銀行、土地銀行、台湾中央信託局の4行の国営銀行が外国銀行による銀行部門の支配を防止する目的で現地金融持株会社を共同で設立することを認めるよう要求している。その4行の総資産額は6兆5000億新台湾元、純資産総額は2975億新台湾元となっている。

労働組合側では、外国銀行が4行を合併するために注入する必要のある資金は150億から300億新台湾元、すなわち4行が保有する純資産総額の5%から10%程度に過ぎないとしている。その一方で、労働組合側は、FSCの合併協議委員会が市場に影響を与え、市場の自由で自発的な機能を妨げる恐れがあることから、同委員会による協議を延期するよう求めるとともに、合併政策が、特定の外国企業に有利な形で策定されている可能性があるとも述べている。

さらに労働組合側は、従業員800人を強制解雇した高雄企業銀行と従業員の半数が失業状態にある台北銀行を例に挙げ、民営化に対する懸念を訴えている。職業の自由選択を保証することで、解雇された従業員を支援するとの陳水扁総統の公約が守れていないことを非難し、具体的に実施された計画は何もないとしている。

FSCはその点について、台湾に必要なのは高い競争力を維持できる大規模金融機関であると反論している。

『ウォールストリートジャーナル』は、コンサルタント会社マッキンゼーが今年1月2日に発表した研究報告書を引用し、金融部門の国際競争力を高めるために、台湾政府は国内銀行の合併を加速させる必要があるとしている。同報告書によると、台湾の金融サービス産業の業績はアジアで第4位となっているが、台湾における金融機関の過当競争状態は銀行の長期的発展に悪影響を与えることになりかねないという。

台湾は人口2300万人の国であるが、49の銀行と融資専門の金融機関が300以上存在するという過当競争状態にあり、銀行が事業拡大を図ることは困難であるという。台北市に限って見ると、平均1万人当たりの銀行支店数は3.4であるが、香港の1.9やニューヨークの1.3と比較して非常に高い数字となっている。マッキンゼー社は同報告書の中で、高い国際競争力を維持できる融資銀行1行ないし2行、大規模国内銀行が5行、黒字経営の小規模銀行数行を含め、台湾の金融機関を多くとも15行まで減らすよう提案している。

台湾の政府は、国内銀行の合併の重要性を認め、金融機関の合併に向けて積極的な取り組みを見せている。陳総統は2004年10月、台湾の金融機関が2005年までに、10%を超える市場占有率を達成するとの政策を発表した。同政策の目標には、2005年までに国営銀行の数を12行から6行に減らし、2006年までに金融持株会社の数を14社から7社に減らし、外国株式市場に参入している金融機関1社以上の協力を取り付けることも含まれている。

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