タイの教育と労働力育成問題

カテゴリー:人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2005年12月

タイにおける就学率は高く、3~21歳までの就学率(学校制度内)は1997年の65.1%から2004年の73.5%に増加している。15歳以上の平均就学年数は、2002年の7.6年から2004年には8.1年となっている。

しかし、教育年数が延びる一方で、長年の課題とされてきたタイ人労働者の実務能力育成の問題はまだ解決されていない。世界各国の企業の事業所・工場が駐在するタイでは、単純労働者以上の労働者の技能水準と、企業が必要としている労働者の水準にミスマッチがあると指摘がなされる。その上、来る少子化社会においては労働生産性の向上を目指して教育制度を改革していく必要がある。

特に、科学技術やIT分野での労働者育成は他の分野よりも遅れをとっている。例を挙げれば、タイの科学技術能力はIMDの国際競争力ランキングによると科学分野で2002年は43位(49カ国中)、技術分野で48位(49カ国中)、2004年は55位(60カ国中)、45位(60カ国中)となっている。最先端技術に携わる人材もさることながら、中間層の人材も不足しているというのが現状だ。

さらにタイは、研究開発(R&D)投資額も十分ではない。2002年のR&D総額はGDPの0.15%、2004年は0.26%で、これは国民一人当たり約200バーツしか配分されていないことを表している。参考までに、先進国では平均2%台、隣国のマレーシアでは0.49%、シンガポールは2.12%、台湾は2.16%(2003年)で、タイと比べて、高い数字であることがわかる。

政府は第9次経済社会開発計画の3年間で、製造業とサービス業などの13部門の労働力需要を調査し、その結果をもとに労働者訓練に関するアクション・プランを策定した。また、能力研修を各地で開催し、2002~2003年には労働者40万人以上が受講した。

また、初等教育以下の学歴を持つ労働者の割合は、2002年で35.6%、2003年は38.8%、2004年には38.2%と上昇したが、第9次計画終了までに50%までに引き上げるという目標には到達していない。そのため、労働者がより教育を受けられる機会を提供するとともに、学校教育制度では初等教育以下の年数しか就学できなかった労働者に対しても、学校教育制度外での実技研修や訓練制度を提供することが必要となっている。

さらに、起業を希望する労働者に対しても、政府は技能研修の実施や相談窓口を全76県に設置することで対応している。

タイは各国との自由貿易協定 (FTA)の締結を進めているが、貿易の自由化が進めば、高い生産性をもつ質の高い労働力が求められるため、それに対応した教育・訓練制度が必要となる。

出所

  • 国家経済社会開発委員会(NESDB)2005年年次総会配布資料より

参考レート

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