失業保険制度の改革

カテゴリー:雇用・失業問題労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年12月

スウェーデンの持続的に高い失業率は、政府に失業保険制度の運営に関する議論を進展させるよう促している。2006年予算案において、労働大臣は、失業保険基金と職業安定所のより厳しい管理を提案している。加えて、不正に対抗するためのより厳格な管理を要求している野党は、失業者が職業安定所に登録された求人にもっと積極的に応募するよう強制する措置を主張している。

行政機関を監督する国家会計検査委員会は、最近の報告書において、多くの失業者が職業安定所の示す就職先に積極的に応募していないにもかかわらず、失業手当打ち切りの決定数が少なすぎると指摘する。そして職業安定所自体が、求職者の失業当初3カ月間に、非常に少ない選択肢しか示さないかまたは単に何もしていないと批判する。合理化された新しい労働市場庁(AMS)が管轄する職業安定所が従来どおり職業紹介サービスを実施する一方で、失業者は電話やインターネットで提供されるコール・センターのサービスを利用できる。これは戦略としてはよく見えるが、実際はあまり機能していないようである。長期失業や恒常的失業に陥る危険性は、失業当初3カ月間に潜んでいる。

スウェーデンでは現在、短期および長期の失業手当受給者が年間約60万人いる。これらのうちの数%だけが、規則を破って紹介された仕事に就いていないと、失業保険基金に報告されている。2004年から失業保険基金と職業安定所を管轄する失業保険局(IAF)は、この数字はあまりに小さすぎるとしている。職業安定所が発見した規則違反のうち、わずか5分の1が、手当の支給停止や削減を行ったとして基金に報告されている。失業保険局が詳細を調査したケースの50%以上で、職業安定所の職員は、様々な言い逃れによって、紹介された仕事を断った失業者を容認していた。

会計検査委員会と失業保険局の双方は、規則は十分に厳格であるが、問題はあまりに甘い規則の運用にあると指摘している。

規則によれば、失業者は、どの方角でも通勤時間2時間以内の仕事を受け入れなければならない。失業後100日経過した失業者は、失業手当を失わないためには、国内のいかなる場所でも、自分に適合する仕事に就かなければならない。職業安定所は、雇用機会を下見に行くための旅費と滞在費を支給し、もし家族全員が移転する場合には、引越費用も負担する。求職者は、週末にしか家族のもとに帰れないような場所の仕事でも、引き受けなければならない。この規則は厳格であり、小さな子どもを持つ親にとっては特に厳しいものである。

政府、会計検査官および監督機関の失業保険局は、国内の地域ごとに非常に異なっている職業安定所の取扱いについて懸念を示している。これは、長期的には、法律の規定と個人の法的権利を脅かすものである。他方、仕事が全くないときに、職業安定所の職員が厳しい規則の適用に熱心でなくなるのは理解できる。

【失業手当の運用規則】

  • 失業当初の3カ月間、被保険者は、どの方角でも通勤時間2時間以内の仕事に短い告知期間で就けるよう準備しなければならない。
  • 失業後100日経過した被保険者は、国内のいかなる場所でも、たとえ専門外であったとしても、自分に適合する仕事に就かなければならない。
  • もし被保険者が紹介された仕事を拒否した場合は、管轄の失業保険基金に報告され、40日間は失業手当が25%減額される。それに続く40日間は失業手当が50%減額され、その後、被保険者が最後の仕事を拒否した場合には、失業手当は打ち切られる。
  • 職業安定所において失業手当の受給資格に疑問のある事例の件数は、2005年第1四半期に前年同期の1,580件から2,416件に増加した(+50%)。
  • 失業手当は、月額2万2000スウェーデン・クローネ(SEK)を上限に、賃金の80%の額が支払われる。政府の委員会は、上限を2万7000 SEKに引き上げるよう提言した。政府は、委員会報告に対して迅速な対応を求められ、傷病手当と同水準の3万3000SEKに引き上げる準備を行うと発表した。
  • 中産階級政党同盟は、2006年9月の総選挙で政権を取った暁には、手当の水準と上限の両方を引き下げると発表した。同盟はまた、労働者の共同出資分を、現行の共同出資分と労働組合負担分の合計の水準まで引き上げ、制度を国営にするよう主張している。

出所

  • 当機構委託調査員レポート

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