職場雇用関係調査 (WERS 2004)の概要

カテゴリー:労使関係

イギリスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2005年12月

2005年8月、貿易産業省(DTI)が発表した2004年職場労使関係調査(Workplace Employment Relations Survey : WERS2004)(注1)によれば、賃金などの労働条件決定手段として団体交渉を行う職場が1980年の調査開始以来一貫して減少していることが明らかになった。

背景に労組の弱体化

WERSは、DTI、助言斡旋仲裁局(ACAS)、経済社会研究協議会(ESRC)、政策問題研究所(PSI)によって実施されるもので、今回が5回目。調査結果によれば、約7割の職場で使用者の「一方的な」意思決定によって労働条件が決定されており、労働条件決定の手段として団体交渉を行う職場が1980年の調査開始以来一貫して減少していることが明らかになった。

団体交渉が衰退した背景には、組織率の低下や従業員代表制度の導入に伴う労組の影響力の衰退があると見られている。1980年代、組合員は収入面などで非組合員より有利な労働条件を手にいれることでメリットを実感することができた。しかし、現在では労組加入による賃金面でのメリットは殆どなく、男女の機会均等やパートタイム労働者の権利などの立法を通じた変革の推進力の多くはいまや、労働運動ではなくEUからもたらされるといわれる。(注2)

大企業では団体交渉が定着

 特に民間部門で団体交渉を敬遠する傾向が強い。しかし産業別に見ると製造業では約3分の1の職場が団体交渉を行うなど、基幹産業では依然として団体交渉を行う傾向が見られる。これについてエンジニアリング事業者連盟(EEF)雇用担当副理事のデイヴィッド・イーンドル氏は、「従業員代表と比較して、交渉のプロセスがより単純化されているため大企業は労組との交渉を好む傾向がある」と分析している。(注3)

表:職場における賃金決定方法(1998年・2004年)
(複数回答・%)
  1998年 2004年
 
団体交渉 30 22
使用者によるもの 69 70
個別交渉 13 13
その他 14 7

関連情報