労働環境行動計画2010
雇用担当大臣の諮問機関である労働環境審議会(注1)は、労働環境改善の国家プログラム「労働環境行動計画2010」に関する答申書の作成作業を終了し、雇用担当大臣に提出した。同答申書は、現行の行動計画「クリーンな労働環境2005」に代わり策定・実施される行動計画の基盤をなすもので、政府および労使双方が2006年から2010年にかけて最優先すべき課題が提示されている。
4つの優先課題
労働環境審議会は、2005年から2010年の労働環境分野の最も重視すべきテーマを、労働災害、精神的労働環境(注2)、騒音、筋骨格疾患とし、これらの問題解決に積極的に取り組むことを提言している。
1.労働災害
事故死、労働能力の喪失、後遺症、長期欠勤、労働市場からの撤退など、労働災害は勤労者本人はもとより、家族、企業、社会に対して重大な影響を与えることになる。1996年に労働災害の予防が優先課題として取り上げられて以来、労働災害の発生届出件数は年々減少の傾向にある。しかし、労働基準監督局の統計によると、2004年度における届出件数は41,936件、うち死亡事故43件、他の深刻な事故4,816件となっており、2005年度についても届出件数はほぼ同数であろうと予想されている。労働環境評議会は、高リスク作業の縮小や予防対策の充実化を図り、2010年度の労働災害発生率を対2005年度比で20%減を目標に掲げている。
2.精神的労働環境
精神的労働環境は、職場の人間関係、家族に優しい職場(勤労生活と家族生活との関係性)、仕事に対する満足度など、心理的な観点からみた職場環境を意味する。労働環境評議会は、精神的労働環境を改善する要素として、1)労働条件等に対して個人的に影響力を行使(休暇、フレックスタイムなど)、2)仕事の目的や全体像が明瞭、3)同僚や上司の支援が期待できる、4)納得できる待遇(評価、賃金、昇格など)、5)適度な仕事量や仕事の質などについての要求を挙げ、職場の心理的環境改善の指針とするよう呼びかけている。反対に精神的労働環境を悪化させる要素としては、仕事や業績に対する不当な要求、単純作業、いじめ、セクハラ、同僚や上司からのサポートが期待できない、シフト作業、不適切な報酬、不十分な情報提供、解雇への不安、自己開発の可能性の不在などが挙げられている。
3.騒音
聴覚障害の発生原因となる騒音問題を抱える職場は、依然として少なからず存在している。政府の外郭団体である労働環境研究所が2004年に行った調査では、土木・建築業界、鉄鋼業界における特定の職場の平均騒音レベルは83.7デシベルを超えることが分かっている。また、国民学校や幼時保育所についても、騒音レベルが80デシベルを超える時間帯が少なくないことも明らかにされている。労働環境評議会は、これらの職場で騒音による聴覚障害が発生することを予防するため、2010年までの5年間で騒音レベルを対2003年比で15%減少させることを達成目標に掲げている。
4.筋骨格疾患
労働負荷(単純な重複作業、リフト作業等)に起因する筋骨格疾患による欠勤率が極めて高いことが、労働環境研究所の調査で明らかになっている。労働環境評議会は、作業手順や作業の技術的改善、作業者の健康や安全に配慮した機器の導入を提唱すると同時に、例えば在宅ケア分野においては、リフトなどの福祉機器をより積極的に活用すること、専門家の指導による筋肉トレーニングやリフトテクニックに関する研修会の実施等の措置を通じて、筋骨格疾患の予防策を積極的に推進するよう提唱している。
注
- Arbejdsmijloradet。LO(デンマーク労働総同盟)、FTF(デンマーク公務員・俸給従業員連盟)、AC(デンマーク専門職労働組合同盟)、DA(デンマーク使用者連盟)、SALA(農業分野の使用者団体)、農業理事会、LH(管理職組合)、全国コムーネ連合、全国県議会連合、コペンハーゲン市・フレデリクスベア市、財務省、労働基準監督局、労働環境研究所、保健省、労働災害局の代表(計21人)により構成される雇用担当大臣の諮問機関。
- Psykisk arbejdsmiljo。精神衛生に影響を及ぼす心理的な面における労働環境。
出所
- 当機構委託調査員レポート
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