第11次5カ年計画案、共産党中央委員会を通過

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  • 国別労働トピック:2005年12月

2005年10月11日、第11次5カ年計画案が第16回共産党中央委員会第5次会議を通過した。この新5カ年計画は、2006年から5年間にわたる安定した社会建設を堅実に行うための国家目標を示すものであり、中長期的な国家の課題や施策の重点を網羅し、豊かな市民生活の前提となる良好な経済発展や社会の進歩のための改革の進展を促す指針となるものである。

新5カ年計画案では、豊かな社会を形成していくための考え方として「富ある者を抑えつけ、貧しき者を助ける」というのではなく、鄧小平が唱えた「先富論」(まず先に富めるものが豊かになることにより最終的に皆が豊かになる)の思想を踏襲しつつ、低収入者の収入増加を実現することで国民の全てが豊かになる(共同富裕)ことが重要であるという考え方が示されている。

また、そういった豊かな社会を実現するために、新計画案においては、(1)「環境適合型社会」の構築、(2)不動産税、城市不動産税、城鎮不動産税、土地譲渡税を合併した財産である「物業税」の統一的、具体的措置の確立、(3)大、中、小それぞれ中核都市の経済集積や交通網を有機的に連携させ、発展を背景とした都市の活性化を目指す「都市圏」(城市群)の形成、(4)有害な農薬や科学肥料の使用や残留を厳重に管理し、水質、大気、生産の汚染を排除すること――の4つの新たな視点が加えられたことが特徴であると10月30日付の工人日報の記事は紹介している。

さらに、新計画案は、(1)経済社会発展の主要目標として、全体目標が明示されている、(2)国内総生産を2020年までに2000年の4倍にし、2010年までに2000年の2倍の国内総生産を実現するなど、具体的数的指標と達成の優先順位が明確化されていることに加え、資源節約型、環境友好型社会の建設、ブランド力と国際競争力のある企業、特にベンチャーの育成の奨励、人間本位の社会建設などの方針を示していると新華社は解説している。

先の工人日報の報道から、新計画案において政府が目指す国づくりの方向を労働者生活との関係で紹介すると以下の通り。

「科学の発展」に伴い経済社会の発展も促進されるという理念のもと、(1)9年制義務教育の全国的な普及、都市雇用の持続的増加、社会保障体系の整備進展、貧困層の減少、(2)住居、交通機関、教育、文化、環境衛生と都市住民の生活水準の全般的向上、(3)民主的な法治国家の建設、安定した社会と職場安全の確保――の三大目標が市民生活の豊かさを実現する目標として特に期待される。また、「共同富裕」(国民のすべてが豊かとなる)社会をめざすため、政府はマクロ政策に基づき国家財政支出機構を構築し、国民収入の均等配分を速やかに実現する、特に農村、農民の収入増加と安定性確保をはかることが急務である。

「就業の拡大」を図ることが経済社会発展に不可欠である。就職難の解消のため、再就職支援政策の充実、職の受け皿としての中小企業の発展促進、就職困難者への就職援助施策の実施、ベンチャーの育成など積極的政策への期待が高い。2006年から2015年の10年間を見た場合、経済成長が現状まま推移すると、都市部では毎年550万人の新規労働力が発生するのに加え、農村部でも都市化の進展で毎年1000万人の農村余剰労働力が発生することが予想される。さらに、国有企業改革の更なる進展は450万人の再就職を必要とするリストラ労働者を生み出し、これに既存の失業者を加えると毎年2400万人分の就職先が必要となる計算である。就職難はより深刻なものとなることが予想される。これに対して、労働社会保障部は、次期5カ年計画期間中、4500万人の新規就業の実現を目標として掲げている。

「医療保障体制」の改革も必要に迫られる。高齢化社会を迎える今日、医療保障体制が未整備であるため、日常的に高額な医療費と薬代に市民が悩まされていることから、政府による積極的な改革が期待される。中国では今年60歳以上人口が1.3億人に達し、全人口の10%を超えた。今後、毎年平均3%の割合で増加していくことが予想される。

「農村」に関して、民生にかかる問題の解決が期待される。国家統計局の調べによると、現在でも60%の農家にはトイレがなく、7000万戸が改善を必要としている。また、1.5億戸の農家は燃料問題を抱えている。さらに、6%の「村」に公道がなく、2%は電気が、6%は電話がない。そして1%の都市には衛生院がなく、60%以上の県には汚水処理場がないことが報告されている。このような結果からも次期5カ年計画における新農村建設への課題は多い。

また、安全衛生や労災防止など「公共の安全」対策に関して、ある調査によると2004年の全国炭鉱事故による死亡者は6027名に上ると報告されており、そのうち大規模事故と認定されるものも94件発生し、2024名が命を落としている。交通事故も多発しており、毎年10万人以上が死亡している。さらに食品衛生については、有名企業での化合物混入事件が相次いで摘発され、生産現場での衛生管理の問題が浮上した。公共の安全対策や公衆衛生確保のための体制整備も豊かな経済社会を築くために急務となっている。

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