平均給与、依然低水準で推移

カテゴリー:労働条件・就業環境統計

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  • 国別労働トピック:2005年12月

労働省の集計によると、2005年1~9月に全国では140万8,000人の正式契約雇用が増加したが、その内の91.2%に当たる128万4,000人は、最低賃金の2倍まで(現在約261ドル以下)という低い水準であることがわかった。また残りの12万4,000人は最低賃金の2~3倍(261~391ドル)だった。さらに新規採用は、高い給与水準に達した勤続年限の長い労働者を解雇して、安い賃金の労働者と交代させるローテーションが多く見られている。2005年は9カ月間に最低賃金の3倍以上(約391ドル以上)から14万1,500人が解雇された。

1999年以来、正式雇用は増加を続けて、政府はこれを労働党政権の成果として盛んに宣伝しているが、給料水準は低下したままである。このため一般の国内消費は伸びず、GDPは底力ある進展が出来ないでいる。内需を支える一般国民の購買力は強化できず、単に正式雇用の数だけが少し増加している現状では、安定したGDPの成長は望めない。労働市場の専門家たちは、国家成長のモデルが、平均給与水準を下げていると分析している。現在のGDP成長は、農畜産物、鉱物資源など、国際価格が低く、技術的付加価値が低い1次製品の輸出が主体となって支えられており、人件費を節約する事によって国際競争力を維持している一面がある。

また、毎年行われる増税のために、企業は生存手段として、人件費削減、雇用の非公式化を更に強化している。内国工業連合会のアルマンド・モンテイロ会長は、近年平均賃金は次第に低下して、現在の国内の平均は約800レアル(約348ドル)となっていると発表した。

特に労働党政権に入ってから、企業は激しい競争を強いられ、コスト削減を迫られている。その一手段として、全国雇用の大部分を占める中小企業では、高い給与の労働者を解雇し、安い給与で労働力を補充するローテーションを常用している。労働法では同一職種の労働者を交代させる場合は、前任者の給与水準以下に下げることを禁止しているが、現実には全く守られていないのが実態。中央労組CUTの見解によると、慢性的高率失業時代が続いている上に、政府が毎年行う増税と、通貨引き締め政策で企業財政が圧迫されているのがその原因。市場には、給与の額を問わないで就職したい失業者が増加し、企業にとってはローテーションによる人件費削減の理由付けが容易になっている。

参考

  • O Estado de Sao Paulo紙2005年11月7日付

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