CUTが富裕税1.5%を提案

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  • 国別労働トピック:2005年12月

富裕税導入は最低賃金を引き上げる手段

中央労組CUTは、長期に渡って最低賃金を引き上げる財源として、市場価格240万レアル(約104万ドル)以上の資産を有する約30万人の世帯の所得に対して、年間平均1.5%の所得税を追加する案を国会に提出する準備を行っている。CUTのジョアン・フェリシオ委員長によると、これを「富裕税」と称して徴収し、連帯基金として蓄積して、最低賃金を引き上げる財源の一部に当てるとしている。1年分の徴収238億レアル(約103億4,783万ドル)だけで、最低賃金を毎年実質9%ずつ7年間引き上げる資金を作ることができるという計算だ。CUTでは、「この富裕税は、増税ではなく、最低賃金を永続的に引き上げていく政策の導入であり、所得配分の上で最も適切な手段である」と説明している。

政府をけん制

CUT委員長によると、「歴代政権や政党は、富裕税法案を国会で可決させていながら、政府が施行細則を出せないために、実際は徴収されていない事態が続いている。毎年、最低賃金改正時期である5月が近づくと、中小企業は「最低賃金を引き上げるゆとりはない」と発表し、市役所も、社会保障院も財源がないと言い訳をして、最低賃金を低く抑えようとする議論を繰り返す。こうた不毛の議論は毎年繰返されている。もしCUTの富裕税案を政府が拒否するなら、CUTは2006年に最低賃金を400レアル(現在で約174ドル)、2007年には525レアル(約228ドル)へ引き上げるよう要求する構えを見せている。CUT委員長は「これが実現すると、ルーラ大統領は任期4年間で最低賃金の購買力を2倍に引き上げる公約を実現することになる」と発表した。

富裕税提案の背景

労働党と、労働党政権内の不正が発覚して、政治危機が長期化し、またCUTを指揮していた幹部たちが、政府の要職についてから、不正に関与している事について、労働者の不満が高まっている。そのために、これまで労働党政権と直結していたCUTは、方向を転換して、政府とは独立している中央労組と言うジェスチュアを取り始めたという見方が強い。これに関して、フェリシオ委員長は「労働組合は政権に関係なく、主張は出しているし、今度の政治危機に対しても、沈黙はしていない。CUTの前指導者が不正に関与した容疑に関しても、CUTは何の動揺も感じていない。CUTから政府高官となった人物達の中には、選挙資金確保手段として、裏金のような適切でない手段を取った人物もいるが、裏金とは国内の政界では慣例であり、何処にも存在する事ではないか」と、党幹部の行動を擁護する発言を行った。

ルーラ大統領も、政党の裏金は政界の慣習であり、労働党だけの問題ではないと、これまで主張していた「裏金は許容できない」と言う発言を微妙に修正し始めている。ルーラ大統領個人の選挙資金300万ドルをキューバ政府が拠出したと、国内最大の総合週刊誌が告発したり、国会ではキューバ政府の献金ではなく、労働党が裏金としてキューバに隠匿していた資金が、選挙資金として再度ブラジルに持ち込まれたと告発されたり、国営銀行ブラジル銀行や公社,財団から、労働党へ巨額の公金が、裏金に転換して納入されたと言った問題が、次々に告発されており、国会機能、政府機構ともにまだ混乱状態が続いているのが現状だ。

参考

  • Folha de Sao Paulo紙2005年11月3日付

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