ベトナムにおける商業部門の賃金政策及び賃金改革の方向性

カテゴリー:労働法・働くルール労働条件・就業環境

ベトナムの記事一覧

  • 国別労働トピック:2005年11月

1.第1~4次賃金改革の概要

(1)第一次賃金改革1960~1984年

1960年に最初の賃金改革が行われた。主な目的は、現物支給から現金賃金支払への移行であったが、戦時下の緊急事態により現金と商品引換券の形に変更され、当時は商品引換券が支払いの主要部分を占めていた。(注1)

(2)第二次賃金改革1985年-1992年

1985年、再び商品引換券の廃止という意欲的な目標を掲げ、2度目の賃金改革が行われた。結果、商品引換券は1991年までに完全に廃止された。しかし当時は、生産は低迷、3桁のインフレが進行し、名目賃金が上昇するなど、ベトナム経済の最も暗い時期でもあった。

(3)第三次賃金改革1993年-2004年

所得創出の促進、正当な所得の保護、地域及び分野間の所得の公正な分配、現物補助の廃止、賃金と給与の現金化、国家の管理下にある市場志向型経済に基づく賃金支払い制度の構築が主な目的とされていた。

(4)第四次賃金改革2004年以降

第4次賃金改革が2004年に開始され、現在に至っている。社会主義の方向性において市場志向経済の賃金支払いを発展させ、社会正義を高めることを主目的に下記の方針が打ち出されている。

  • 賃金支払いは正確かつ完全な方法で計算されるべきである。
  • 給与表は簡潔性と有効性を十分に尊重しながら、実行されるべきである
  • 賃金管理は、賃金支払いの方法、企業での市場原理に基づく手当(特に才能へのインセンティブ)などの確立を適切に奨励しながら構築されるべきである。
  • 企業における調和のとれた労使関係を残し、支払い決定に際しての利害関係者の役割を推進する。

2.商業部門の賃金政策

(1)最低賃金

最低賃金は4つの指標(最低生活必需品、経済の引受能力、市場調査の結果、消費者物価指数(CPI))によって決定される。最低賃金の調整は経済成長、CPI、及び労働力の供給と需要に従って計算される。2005年10月、一般最低賃金は月290,000ドンから月350,000ドンに引き上げられた。ベトナムでは、企業の形態によって別建ての最低賃金が設定されている。国有企業(SOE)の最低賃金レベルは、月35万ドン~105万ドン。外資企業は48万7000ドン~62万6000ドンとなっている。政府はすべての企業を対象とする最低賃金レベルを策定することが望ましいと考えており、統一に向けて検討を進めている。

(2)給与表と給与等級:

SOEの場合、1:2.34:8.5という最低賃金-平均賃金-最高賃金の相対関係に基づき、2つの給与等級と20の給与表が設定され、管理者、技術者、肉体労働者の賃金所得者に適用可能となっている。

企業及び海外直接投資企業法(Law on Enterprises and the FDI enterprises)の規定に基づくその他の企業については、給与表と給与等級は特定の事業成績の実情に従って公式化されている。

関連情報