台湾でのタイ労働者の暴動事件、政府関係者関与の疑いも

カテゴリー:外国人労働者労使関係

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  • 国別労働トピック:2005年11月

2005年8月に起きた台湾高雄市でのタイ人労働者の暴動事件。事件の調査が進むに連れ、仲介料金の設定などに関して政府関係者が関与していた疑いが浮上してきた。タイ人労働者の劣悪な労働環境・条件に加えて、労働者を保護するための政府関係者が、搾取行為に関わっていたことが、大きな波紋を呼んでいる。

現在台湾で就労しているタイ人は登録済みの労働者で約55万人、不法就労を含めると約100万人程度と言われている。今回の暴動をきっかけに、タイ政府からの要請とともに、高雄市と台湾政府は台湾内のタイ人を含む外国人労働者の調査に乗り出している。

調査の途中経過の段階で、暴動が起こった高雄の地下鉄建設会社に勤務する約900人のタイ人労働者が、台湾に出稼ぎのために総計1億3500万バーツの仲介金を支払っていたことが明らかになった。現在これらの業者は業務停止処分を受けており、調査の結果によっては仲介業許可証の取り下げが検討されている。

一方、一部の政府関係者も出稼ぎに関する資金を横領・着服していたことが明らかになっている。特に出稼ぎ労働者が多い北部と東北部の労働局の担当者が、約1700人分の出稼ぎ労働者の仲介料を水増しして請求していた。水増し額は、労働者1人当たり約9万5000~15万バーツ程度。

タイでは一般的に、労働者が台湾に出稼ぎに行く際に必要な仲介料は20万バーツ程度が相場であるといわれている。この資金は、親戚や友人に前借する場合や、一部を支払った後、残額は出稼ぎ先で支給される賃金の一部から返済していくなどの支払い方法がある。

現在政府は、北部と東北部14県の地方労働局で、横領・着服の事実関係に関して、地方局がどのような対処を行ってきたかの詳細な調査を進めているという。

このほか、出稼ぎ前の労働者からの搾取も取り上げられ、2重の「搾取」構造が明らかとなりつつある。いまだ法整備が十分でないタイ人労働者に対して、公平な仲介料金の設定、仲介業者への厳しい監査、労働権利の確保をどのように行っていくのかは喫緊の課題となっている。

参考

  1. The Nation,2005年10月11,22,23日、 Bangkok Post、2005年10月10日
  2. 1タイバーツ=2.86円(※みずほ銀行ウェブサイトリンク先を新しいウィンドウでひらく2005年11月9日現在)

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