両親保険の改革

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年11月

両親休暇について議論してきた国家委員会は9月14日、両親休暇の期間を両親双方が有給で取得できる5カ月(計10カ月)と両親の希望によりどちらか一方が取得できる5カ月にする改革案を発表した。現在は、両親双方が2カ月取得でき、残りの9カ月は両親の選択によりどちらか一方が取得できる。両親手当の額は、賃金の80%であり、2006年7月1日からは、月額手当の上限が3万3100スウェーデン・クローネに引き上げられる予定である。

改革案は、両親休暇を取得する父親がわずか18%しかいないという事実に基づく。その分母親が子どもと一緒に家にいる期間が長くなるため、母親は職業キャリアと賃金の両方を失っている、と委員会は指摘する。最近の法改正により両親休暇を取得する両親には高い雇用保証が与えられたが、両親休暇取得者に他の従業員と同等の賃上げを適用するかどうかは使用者の裁量となっている。実際は、依然として、妊娠した女性を追い出したり、育児している母親を雇い入れようとしない数多くの使用者が存在する。

国家委員会の提案は、両親休暇を半分づつ両親双方に割り当てる最も民主的な配分と、キリスト教民主党が要求する民間育児サービスの購入や両親どちらかの給与に利用できる現金給付との間の妥協の産物であった。

世論調査は、大多数の国民が現在の制度に満足していることを示している。そのため社会民主党が来年の総選挙前に、両親保険をさらに平等主義の方向に導く改革に乗り出すかどうかは疑わしい。しかし、この問題は、間違いなく今年秋の社民党大会において熱心に討議されるであろう。

スウェーデン労働組合総同盟(LO)は、国家委員会が提案した両親休暇制度の改革案を支持している。LOは、9月18日に発表した報告書の中で、男性の両親休暇取得者はすぐにフルタイムの仕事に復帰できる一方で、両親休暇を終えた女性のフルタイムの仕事は減少していくだろう、と警告する。LOの研究者は、これらの事実は、労働組合の政策を、両親間で両親休暇を等しく配分という方向に導くと示唆している。問題は、使用者を含む社会全体に、すべての階層の平等を実現するための雇用および福祉政策を推進する政治的圧力があるかどうかである。

統計によると、女性の75%、男性の94%が、子どもが生まれる前にフルタイムで働いている。しかし、両親休暇後は、女性の47%しかフルタイムの職に就いていないのに対し、男性は93%がフルタイムの職に戻っている。

さらにブルーカラーの女性の場合、出産前にフルタイムの仕事に就いているのは54%であり、このうち両親休暇後にフルタイムの仕事に戻っている者はわずか39%しかしない。ホワイトカラーの場合、この数字は、それぞれ88%、50%となっている。

これは、労働市場で最も弱い立場にいる女性が経済的自立において最も困難な立場に置かれている状況を示している。男性が家庭の主たる稼ぎ手で、女性の責任は家事と育児であるという考え方を色濃く反映している。言い換えれば、両親休暇政策の形成も、ジェンダー平等の問題というよりも階層問題となっている。

出所

  • 当機構委託調査員のレポート

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