「国家職業訓練プロスペクティブワークショップ」による政策策定メカニズムの推進

カテゴリー:人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2005年10月

2005年6月7日、台湾の非常設議会国民大会は憲法改革法包括案を可決し、2008年までに改革の草案を立法院と国民投票によって可決させる憲法改革の第8ラウンドを開始した。憲法改革局の声明によると、これまでの7ラウンドにわたる憲法改正は、一般大衆がほとんど発言権を持たず、内容も政治的問題に集中していたが、これからはボトムアップ型の参加を拡大し、台湾の国民にどのような種類の憲法を希望するか問いかけることを重視している。

国民参加を重視するボトムアップ型の時流に従って、労工委員会職業訓練局(BEVT、EVTA改め)は、労働者の雇用適正、順応性、競争力の向上を目指して2004年9月に開始された職業訓練中期戦略プロジェクトに基づく「国家職業訓練プロスペクティブワークショップ」と呼ばれる特別訓練政策策定メカニズムの開発を計画した。

さまざまな訓練ニーズに対応した政策を導く全員参加型協議ワークショップ

このワークショップは、民主的参加のための協議チャンネルとなるように計画され、建設的な提案、コンセンサスによる会議参加者とのブレーンストーミングを目的とし、台湾の労働者または求職者に適した国の職業訓練見通しと目標の確立をもたらすことを目指すものである。

長い間、台湾で政府が運営してきた主な種類の職業訓練は公共と企業の訓練に分けられてきた。従来、BEVTが職業訓練活動を促進するための主な戦略としては(1)就業安定基金の6つの公共職業訓練センターの運営を維持するために必要な予算を、政府資金と外国人労働者の雇用主の就業安定費から徴収されるこの基金の両方から提供すること、(2)職業訓練に関係する団体、機関、学校に実地訓練の実施を強く要請するため、政府資金と就業安定基金から予算を提供すること――を実施されてきた。

要するに、従来の訓練戦略は供給重視、すなわちトップダウン・スタイルであった。訓練ニーズが比較的安定していたからである。

問題は、台湾の失業率が1995年から上昇し、政治環境も経済環境も2000年以降、様変わりしたということである。換言すると、職業訓練ニーズは長年にわたって変化してきており、公立職業訓練センターや訓練関連機関・団体での限られた時代遅れの職業訓練トレードを含む従来の戦略が訓練生のニーズに応えるのは明らかに困難である。そのため、職業訓練戦略を供給志向から需要志向に変えなければならず、BEVT は職業訓練の担当を職業センターから数県にわたる広い地域の訓練事業を担うために配備された「地域別運営センター」に変更しなければならなかった。この新しい組織設計の下、従来の公立訓練センターのインストラクターの役割も、インストラクターの技能が時代遅れになったことと地域別運営センターの管理面での必要性を一因として、指導員から訓練プランナーへと変更された。

しかし、このように元々訓練指導員だった者が、訓練事業、特に地域別運営センター・プロジェクトに基づく広い地域の訓練ニーズの仕事を完全に引き受けるのは容易ではない。そこで、「国家職業訓練プロスペクティブワークショップ」の構想が生まれた。

協議型民主主義の定着へ向けた新らたな試み

台湾の職業訓練を発展させるため、このプロスペクティブワークショップの設計は「協議型民主主義」のひとつとして定着される新しい経験である。この協議型民主主義は、決定の影響を受ける全員の政治参加を強調する。この全員が参加するということがプロスペクティブワークショップの中心的モットーと見なされている。協調プロセスを通して、参加者は自分の意見を自由に表現し、議論にのせることができ、参加者の意見と提案を集めることで、最適な行動計画が策定されるようになる。これは、大衆の声に耳を傾け、参加者の意見を尊重するためのモデルである。

BEVTは、「2006-2010年国家職業訓練プロスペクティブワークショップ」を通してイニシアティブを取ることにより、人的資源開発に明るい未来をもたらすために市民全員の力を結集したいと考えている。今後最初に行われるワークショップの会議は2005年10月に予定されている。実業界、訓練機関、一般大衆、専門家、学者の代表がワークショップへの参加を要請される。このワークショップを通して、参加者は、国中のすべての労働者と求職者に職業訓練見通し・目標を策定するために判断し、提案し、コミュニケーションをとることになる。

プロスペクティブワークショップの会議の結論に法的拘束力はないが、訓練政策の起草に際して、政府の重要な参考文書となるであろう。台湾は継続的な高い失業率と教育、雇用の落ち込みの影響に直面しているため、BEVTはプロスペクティブワークショップ・プロジェクトとニーズに適った職業訓練の機能の強化を企図している。

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