2006年総選挙と労働政策
2006年9月のスウェーデン総選挙は、1年前の現在でも既に労働政策に大きな影響を与えている。世論調査で優位に立つ野党4党の連合は、与党社民党政府の政策に勝ると主張する経済成長と完全雇用のための政策を熱心に訴えている。
野党連合の政策は、福祉税、配当にかかる税金の廃止、経済成長を促進するための大規模な規制緩和などである。雇用増大のために、傷病手当と失業手当の削減、この2つの保険制度における待機期間の導入を提案している。野党連合は、手当の削減が、失業者や傷病欠勤者に団体協約で同意された水準以下の仕事に就くことを促し、失業の減少、や使用者の賃金費用の減少に寄与するとしている。
社民党および労働組合の双方とも、野党連合の経済労働政策が経済成長や失業の減少に結びつくとは考えていない。労働組合は、欧州で最も高い経済成長率を根拠に、現在の経済労働政策が長年スウェーデンに貢献してきた事実を指摘する。スウェーデンは、50年以上、経済の国際化に取り組み、国際化に対処するための構造改革を進めてきた。スウェーデンの労働組合も、自由貿易に反対しておらず、保護主義には懐疑的である。スウェーデンの失業率を伝統的水準よりも高くしている(他の欧州諸国よりは低い水準)のは、グローバル化の新たな要因ではない。労組は、納税者にとって非常高くつき、富裕な土地所有者をさらに豊かにするだけのEU共通農業政策に反対している。この政策は、第三世界の食品生産者を欧州市場から追い出し、食品価格を引き上げていると主張する。
労働組合はまた、スウェーデンの労働者が構造変化を受け入れ、経済成長に貢献するために不可欠な、雇用保障措置や失業手当、傷病手当の制度を今変更することは得策ではないと強調する。グローバル化が急速に進展する現在は、むしろ雇用と所得保障のルールを強化・改善していかなければならないとしている。もし規制緩和や手当の削減、社民党以外の政権との妥協が実施されるなら、他の欧州諸国で見られる労働者の抗議行動を発生させ、経済成長は停止するであろうと警告する。スウェーデンは、賃金や福祉水準の切り下げ競争に加担してはならず、福祉制度を維持改善しつつ、経済の新しい潜在需要を見出していかなければならないとしている。
政治面において、選挙運動は事実上既に始まっており、同情ストやスウェーデンで操業する外国企業に対するスウェーデン労働協約への署名の強制など、多くの点で労働・労使関係の問題に焦点を当てた論戦が展開されている。
出所
- 当機構委託調査員レポート
2005年10月 スウェーデンの記事一覧
- 2006年総選挙と労働政策
- 労使団体、外国人労働者の取扱いに関して合意
関連情報
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